第44章 剣と秘薬
「…で、その元凶はどこに行きやがった。」
ぐるりと周囲を見回すが、サクヤの姿は見当たらない。
「それが、帰るなりどこか行っちゃって…。」
コハクの土を持ったまま出て行ったサクヤの行き先は、誰も聞いていなかった。
「お前ら、探してこい。」
「「アイアイサー!」」
コハクを残すハートの海賊団クルーは、ローの指示を受けて夜の街に飛び出していった。
「オレも探してくる!」
「イヤ、お前はモモの傍にいてやれ。」
得体の知れない薬を放置していたことに責任を感じていたコハクだったが、ローの言葉に、今1番困惑しているのはモモだということに気づかされて足を止める。
ちょうど着替えの終わったモモが、ナミとロビンに連れられてこちらに向かってくるところだった。
「母さん…。ゴメンな、オレ…。」
「あら、なんでコハクが謝るの?」
駆け寄ってくるなり謝罪の言葉を口にするコハクに、モモはふふっと微笑んだ。
少し時間をおいたおかげで、まあまあ冷静になれたのだ。
勝手にお茶を飲んだモモも悪いのだし、コハクが責任を感じているのもわかっている。
だから、あえて全然気にしていないようなフリをした。
「ねえ、こうしてみるとわたしたち、兄妹みたいね。」
十数年若返ってしまったモモは、身長もコハクとほぼ同じで、並んでいると仲の良い兄妹のようだ。
「あらほんと。可愛いわね。」
「コハクくん、お兄ちゃんみたいじゃない。しっかり妹を守ってあげなさいね。」
「なに言ってんだよ、呑気な…。」
のほほんとした女性陣にコハクは顔をしかめたが、彼女たちなりの気遣いだということがわかっていたので、それ以上謝るのはやめた。
「それより、身体を若返らせる薬だなんて興味深いわ。コハク、一緒に調べてみましょう。」
こんな時まで、モモはいつも仕事バカだ。
僅かに水分が残ったはずの湯飲みに、モモは瞳を輝かせて近寄る。
「って、あら? あの湯飲みは?」
円卓に置いてあったはずの湯飲みが忽然と消えている。
「ああ、さっきトラ男くんが持っていったわよ。」
「え、いつの間に…!」
どうやら、考えることは一緒らしい。