第44章 剣と秘薬
「モモ、どうした?」
それまで傍観していたローだったが、モモの異変にすぐさま反応した。
「あ…、なんでもな……うぅッ。」
心配をかけまいと、なんでもないフリをしようとしたが、骨が軋むような痛みに呻いてしまう。
「モモ…!?」
「母さん…!?」
ローとコハクの声が重なる。
「コハク、お前、理由を知ってんのか?」
ふらつくモモを支えたローは、直前の反応からコハクがなにかを知っていると感じ、問いつめる。
「いや…、その茶のせいだと思うけど、詳しくはオレにも…。」
明らかに例の“秘薬”が原因だろうが、当のサクヤがここにいない。
「茶…? とりあえず知っていることを話せ。」
「うん…!」
コハクがローに経緯を説明しようとするのに耳を傾けながら、モモは味わったことない痛みに戸惑っていた。
なんというか、身体が溶けていく。
そんな感覚だった。
だんだん力が入らなくなり、ガクリと膝をつく。
いや、膝をついたつもりだった。
「……モモ!?」
珍しく、ローが慌てたような声を出した。
その瞬間、痛みがサッと引いていく。
(あれ…、どうしたのかしら。)
先ほどの痛みが嘘のように、身体の感覚が元に戻っていった。
(もう、大丈夫…。)
いったい、今のはなんだったのだろう。
状況はわからないけど、早く2人を安心させたくて、モモはギュッと閉じていた瞼を開く。
まず、目に入ったのはローとコハクの驚く顔。
珍しいな、2人がこんな顔をするなんて。
その後ろでは、シャチが口をあんぐりと開けていた。
(みんな、急にどうしたのかしら…。)
ふと、違和感を覚える。
ローが、大きい。
もともと身長が高い人ではあるが、なにやら異様に大きく感じる。
そして、その隣にいるコハクと、これまでにないくらい視線が合うのだ。
そう、まるで同じ視線の高さみたいに。
「……?」
なんともいえない不思議な世界に、モモは首を傾げた。
そんな中、最初に我に返ったのは、一連の流れを知っていたコハクだった。
そして一言。
「母さん…、小さくなってるよ…。」
「……え?」
今、なんて言った?