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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第44章 剣と秘薬




「は…? 秘薬?」

自信満々に答えたサクヤに、コハクは胡乱げな視線を向けた。

「うむ。これは昔、私がとある島で手に入れたものでな。とても貴重な薬なんだぞ。」

「へー…。どんな効能があんの?」

基本的にコハクは成分のわからないものを信用しない。
呪いや風習で病が治るのなら、医者などいらないからだ。

「これはの、飲むと十数年肉体が若返るそうだ。」

「……は?」

美肌効果とか、そういう意味だろうか。

「え、すっげーじゃん! コハク、貰っておけよ。」

単純に驚くシャチを横目に、コハクは首を横に振る。

「いらない。十数年って、オレ消えてなくなるじゃん。」

「あ、そっか。お前、6歳だもんな。」

別にそんな不審な薬を信じていないが、断る理由には十分だろう。

「あー…いや。十数年、歳をとるんだったかの?」

「それ、まったく真逆じゃん!!」

記憶が曖昧なのか、コクリと首を傾げるサクヤに、シャチのツッコミが飛ぶ。


「まあ、どちらが本当かは飲んでみればわかる。」

そう言うと、サクヤはきゅぽんと小瓶の蓋を開け、円卓にちょうどよく置かれた冷茶にドボリとそれを入れた。

「さぁ、飲んでみよ。」

「飲めるかッ、そんな胡散臭いモン!」

ずいッと差し出された冷茶を、コハクは目を吊り上げて押し返す。

「なんじゃ、新しいことに挑戦せねば医学は発展せぬぞ?」

「余計なお世話だよ! 土ならやるから、ソレは置いてけ!」

身の危険を感じたコハクは、早々に麻袋に入った土をサクヤに渡した。

どのみち園芸に使えないのなら、この土に用はない。

「すまぬの。では、この薬はここに置いておくから、気が向いたら飲むといい。」

秘薬入りの冷茶を円卓に戻し、サクヤは麻袋を抱えて宿を出て行ってしまった。


「ハァ、なんなんだよ、まったく…。」

ドッと疲れが押し寄せてきて、コハクは椅子に座る。

「で、どうするよ、コレ。ベポにでも飲ませてみるか?」

「やめとけよ…。」

あとで庭にでも捨てようと決め、コハクは土で汚れた身体を伸ばす。

「ずいぶん汚れたなぁ。風呂に入ってこいよ。」

「そうだな。」

浴場の方向に目を向けると、ちょうどそちらからモモとローがやってくるのが見えた。



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