第44章 剣と秘薬
「ただいまー!」
「おう。おかえり、コハク。」
サクヤと2人、街の宿屋に帰宅すると、シャチが応えてくれた。
だが、シャチを含めみんな、外から戻ってきた様子だ。
「なに、みんなどっか行ってたのか?」
「ああ。ちょっとメシ食いにな。お前の分はテイクアウトしてきたぜ。」
ほら…と掲げられた包みを受け取る。
「サンキュ。…母さんは?」
大半のクルーが広間で思い思いに過ごしているが、モモの姿は見当たらない。
「ん…? モモなら先に帰ったから、たぶんどこかにいるはずだぜ。」
では、部屋にでもいるのだろう。
心配性の彼女が出迎えないとは珍しい。
「で、そっちはどうだった? 鉱石とやらは見つかったのか?」
「あー、いや。ダメだったよ。」
せっかくついて行ったが、成果を上げられなかったことを肩をすくめながら明かす。
「そうか、残念だったな。ん? でもその袋はなんだよ。」
シャチがコハクの持ち帰った麻袋を指差した。
「ああ、これは…。変わった色の土があったから、母さんに渡そうかと。」
「へー。相変わらず親孝行だな。」
いかにもコハクの考えそうなことだと納得し、運んでやろうとシャチが土を持ち上げた時、サクヤが口を挟んだ。
「コハク、その土なんだがの、私に譲ってくれぬか?」
「え、これを?」
土いじりが趣味なモモならともかく、サクヤが土を欲しがるとは意外だった。
「どのみちその土は、園芸に向かぬよ。」
「そうなのか?」
なんだ、せっかくここまで持ってきたのにガッカリだ。
でも、だとしたらサクヤはこれをなにに使うのだろう。
「まあ、タダでとは言わん。ほら、おぬしにこれをやろう。」
そう言って、サクヤは懐から手のひらに乗るサイズの小瓶を取り出した。
ガラス製の小瓶には、蜂蜜色の液体が入っている。
「それ、なにが入ってんの?」
得体の知れない液体の正体を尋ねると、サクヤはにっこりと笑って答える。
「これか? これは、秘薬じゃ。」