第9章 裏切り
「そんな顔してたら可愛い顔が台無しだぜ、小娘。」
アイフリードは、屈んでモモと視線を合わせると、怖い怖い…、と大袈裟に首を竦めてみせる。
「お前に残された道は2つ。俺のコレクションになるか、それとも仲間になるか…どちらか選べ。」
その提案に、睨みつけるのも忘れて唖然とした。
モモにとって、アイフリードは両親の敵。
それに先日はローをも殺そうとした。
この男、モモが仲間になるって言うとでも思うのか。
「どちらも、死んだってお断りよ!」
「ふむ…、それは残念だ。」
大きな手がモモの髪を鷲掴みにし、グイッと頭を持ち上げた。
「……ぐッ」
痛みに思わず呻き声が漏れる。
「できれば、お前には前向きに協力してもらいたかったんだがなぁ。」
「きょう、りょく…?」
「お前には、トラファルガー・ローを呼び寄せるエサになってもらう。」
「--!」
アイフリードの目的は、どうやらモモを連れ去って終わりではないらしい。
ローに、なにかする気だ。
「どういうこと? あの人になにかしたら許さない!」
「なにかしたのはあちら方だ。俺の財宝を横取りしやがったし、仲間も殺した。」
なにを言う、モモはもともとアイフリードの財宝などではないし、先にローを殺そうとしたのはこの男の方だ。
「あいつはお前のことが、よほどお気に入りのようだからな。お前のためならこちらの罠にも喜んで嵌まってくれそうだ。」
「ローは慎重な人よ。そんなこと、あるはずないじゃない!」
「いいや、必ずお前を助けに来る。そうだろ、メルディア。」
それまで部屋の隅に控えていたメルディアが、2人の下へと近づき口を開く。
「ええ、必ず来るわ。ローは、この子を愛しているもの。」
「え…?」
耳を疑った。
メルディアは今、なんと言ったか。
「メル…、なに言ってるの…?」
「愚かな子。ほんとうに気がつかなかったの?」
ローが、わたしを愛してる…?