第44章 剣と秘薬
「だ、だって、ロビンが…ローはまだ帰ってないって言ってたわ!」
「ニコ屋が…?」
ああ、なるほど。
モモの言葉を聞いて、ローは瞬時に理解した。
ローが宿に帰ってきた時、唯一ロビンにだけ会った。
けれど、ロビンはモモにそのことを隠し、さらにはこのありえない状況。
つまり、すべてはロビンの差し金だということ。
「ハァ…、そういうことかよ。」
理由はよくわからないが、とんでもないことをする女だ。
「え、なにが…!?」
ひとり状況を理解していないモモは、なにがそういうことなのかと食いつく。
「ニコ屋にハメられたんだろ。」
「え…ッ。そんな、ロビンがそんなことするわけ…--」
言いかけてハッとする。
心当たりがあったのだ。
『頑張ってトラ男くんに聞いてみなさいよ!』
ナミとロビン、3人で話していたこと。
ローが自分のどこを好きになったのかわからないと言った時、彼女らはそう助言していなかっただろうか。
つまり…、2人っきりにしてあげるから、今ここで聞けと?
(嘘でしょ、ロビン…!)
宿に帰ってきた時、ロビンが考え込む表情をしていた理由がわかり、モモは青ざめる。
なんてありがた迷惑!
心遣いは嬉しいけど、この状況は難易度が高すぎる。
「と、とにかく…ッ、わたし、出るわ!」
2人で入浴だなんて、できるわけがない。
小さなタオルで身体を隠しながら、モモはザパリと立ち上がる。
「オイ、慌てると転ぶ…--」
「きゃ…ッ」
転ぶぞ…と注意された瞬間、モモが浴槽で足を滑らせる。
ザブン!
大きな湯しぶきが上がり、モモは痛みを覚悟して硬く目を瞑る。
しかし、予想していた痛みが身体を襲うことはなかった。
「……。」
恐る恐る目を開けると、呆れた顔をしたローがモモの身体を支えている。
「お前は…。注意くらい最後まで聞けねェのか。」
「ごめんなさい…。」
ほとんどお約束な状況に、モモは謝るしかない。
「まあ、いい。俺もそれなりに得をした。」
「え…?」
なにが…? と聞こうとして、自分がどのような格好をしているのか思い出す。
ここは風呂だ。
当然、素っ裸。
さらに、今のアクシデントで小さなタオルは湯の中に沈んでいた。