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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第44章 剣と秘薬




カラリ…。

貸切風呂の扉をくぐったモモは、大浴場よりも少し狭めな脱衣所で衣服を脱ぎ始めた。

受付で借りたタオルを手に、浴場へと向かった。

貸切風呂は、なんとも風流な露天風呂。
もっと小さなものかと思っていたが、大浴場に見劣りしないくらい立派なものだ。

立ち込める蒸気に肌を湿らせながら、モモは足先から露天風呂に浸かった。

「あつ…。」

源泉掛け流しの湯は少し熱くて、血流が巡っていくのがわかる。

「ふぅ…。」

時間を掛けて肩まで浸かると、身体の力をゆっくりと抜いた。

こんな広々とした露天風呂を独り占めできるなんて、なんと贅沢なことだろう。

めったにできないことなのだから、思いっきり堪能してやろうと考えた時だった。

ゆらりと湯面が波打ち、湯煙のむこうでなにかが動いた気配がした。


(え…、誰か…いる?)

でも、そんなはずはない。

だってここは貸切風呂だし、入り口の扉に掛けられていた札は確かに“未使用”だった。

だけどもし、ここに誰かいるとしたら?

札を変え忘れていた?
それとも、まさか…変質者?

手元には身体を隠すには心許なさすぎるサイズのタオルしかない。

(いや、待って。わたしの勘違いかもしれないし…。)

むしろ勘違いであってほしい。

けれど、モモの期待をよそに、再び湯煙がゆらりと動く。

(やっぱり誰かいる…!)

しかも、向こうもこちらに気がついたのか、徐々に近づいてくる。

「だ、誰…!?」

逃げた方がいいのか、それとも大声をあげた方がいいのかわからず、モモは思いきって声を掛ける。


「……モモか?」

しばらく間を空けてから返ってきた声は、モモのよく知る声だった。

でも、ありえない。
だって彼がここにいるはずないのだから。

けれど、モモが彼の声を聞き間違えるはずもないのだ。

「……ロー?」

湯煙の向こうから現れたのは、身体にド派手なタトゥーを描いた、ハートの海賊団の船長だった。



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