第44章 剣と秘薬
「ロビン、ただいま!」
仲間たちと夕食を摂りに外へ出ていたモモは、まだ酒場で盛り上がる一同を残して宿へ戻ってきた。
「お帰りなさい、早かったのね。もっとゆっくり食べてきたらよかったのに。」
「そんなわけにいかないわ。わたしの代わりにロビンが待っていてくれているんだもの。」
ルフィが宿の食材をあっという間に食べ尽くし、他のみんなの食事を提供できる状況でなくなったのは、つい1時間ほど前のこと。
まだコハクとサクヤが戻っていなかったので、モモは留守番をしていようと思っていた。
しかし、先に食事を済ませた方がいいとロビンが留守番を買って出てくれたのだ。
「2人はまだ戻ってきていないの?」
「ええ。戻っていないわ。」
サクヤがいるのだから心配はいらないだろうが、思ったよりも遅い。
よほど鉱石探しに熱中しているのだろう。
「じゃあ、ローは戻ってきた?」
入浴前に姿を消して以来、ローとも顔を合わせていない。
「……。」
「…ロビン?」
一瞬考え込んだロビンを、モモは怪訝に思って見つめる。
「ああ…、なんでもないわ。トラ男くんね、彼もまだ戻ってきていないわね。」
「そうなの…。どこまで暇を潰しに行っちゃったのかしら。」
指輪を預けたままだし、食事だってまだのはずだ。
まあ、子供じゃないので勝手に済ませてくるかもしれないが。
「あら、モモ。あなた、少し汗臭いんじゃない?」
「え、そう?」
ロビンに指摘されて、慌てて自分の匂いを嗅ぐ。
自分じゃあまりわからなかったが、早足で戻ってきたし、夜とはいえ外は暑かったので汗を掻いてしまったかもしれない。
なにより、ロビンが言うのなら間違いないだろう。
「もう一度、温泉に入ってきたらどうかしら。」
「そうね…。」
せっかく温泉に来たのだし、何度入ってもいいのだから、そうした方がいい。
「どうせなら貸切風呂にしたらいいわ。ゆっくり足を伸ばせるわよ。」
「貸切風呂か…。そうね、そうするわ。」
そう言って、モモは浴場へと足を向ける。
その背中を見送ったロビンは、目を閉じて呟く。
“フルール”
貸切風呂の扉にニュッと腕が1本生え“使用中”の札を“未使用”へとひっくり返した。
「さ、私もみんなのところへ行きましょう。」