第44章 剣と秘薬
しばらく街をぶらついていたローは、思いのほか時間を潰しすぎていたことに気がついて宿に戻った。
しかし戻ってみると、宿に仲間たちの姿は見当たらない。
まだ就寝時間には早すぎるし、麦わらの一味もいないことから、全員でどこかへ出かけたのだろうと推測した。
「あら、トラ男くん。遅かったのね。」
全員不在なのかと思っていたら、奥からロビンが顔を出した。
「…アイツらは?」
「みんななら、外の酒場に出かけたわ。」
女性陣が温泉に入っている間に、先に上がったルフィが宿の食材を食べ尽くしてしまったらしい。
これ以上、宿に迷惑は掛けられないと、一同は外の酒場へ夕食を摂りに出かけたという。
もちろん、食べ足りていなかったルフィも一緒に。
「トラ男くんも行くのなら、場所を教えるけど。」
「……。」
酒の力で盛り上がり、面倒くさくなった連中の姿が目に浮かぶ。
正直、行きたくはない。
ただ、モモのことだけは心配だった。
またうっかり酒を飲んでしまわないだろうか。
「モモはコハクくんが帰ってきていないから、すぐに戻ると言っていたわ。」
尋ねてもいないのに、ロビンは察したように告げてくる。
「……。」
ならば行く必要はない。
これ以上自分に構うな…とばかりにローは背を向け、階下におりる。
今ならうるさい連中がいないから、ゆっくり温泉に浸かれるだろう。
湯殿の入口には、男湯、女湯、貸切風呂の立て札。
貸切風呂は誰も使用していなければ、勝手に使っていい仕組みのようだ。
もともと客数が少ないこともあり、今は“未使用”の板が掛かっている。
例え一般客であっても、誰かと共に風呂に入るのは気が休まらない。
ローは板を“使用中”にひっくり返すと、貸切風呂の扉を開けて、中へと入っていった。