第44章 剣と秘薬
夜の帳はすっかり下り、月が約束の位置まで上った。
サクヤが頃合いを見計らって鉱山から出ると、その姿を見つけたコハクが駆け寄ってくる。
何度かサクヤのもとに鉱石を運んできたコハクだったが、最後の方は姿を見せなかった。
「どうだ、あれから鉱石は見つかったのか?」
成果はあったのかと尋ねてみるが、コハクは悔しそうに首を横に振る。
「いや…、見つからなかった。オレの勉強不足だったよ。今回は諦める。」
「…そうか。」
知識とは別で、彼が運と巡り合わせで見つけるかもしれないと思っていたサクヤは、なんとなく残念な気持ちになる。
そんなことを思うくらいなら作ってやればいい話だが、約束は約束。
見つからなかったということは、今はまだ時期ではないということかもしれない。
「では帰ろう。きっとモモも心配している。」
「ああ。」
あれほど固執していたのに、コハクは思ったよりも気落ちしていない。
それどころか、少し大人びたようにも見える。
この短い間に、なにか成長できるものを見つけられたのかもしれない。
「よっこらせ…と。」
鉱石は見つからなかったと言ったコハクだが、大きな麻袋にパンパンに詰まったなにかを背負いあげた。
「む…、それはなんだ?」
「ああ、これ。珍しい色の土を見つけたんだ。母さんの土産にちょうどいいと思って。」
なんとも母想いの子だ。
自分の鉱石探しよりも土産を優先させるとは。
「珍しい色とな。どれ、見せてみよ。」
土壌のことならサクヤもそれなりに詳しい。
助言くらいできるだろうと、コハクの背負っていた麻袋を覗く。
重たいだろうに、中には土がぎっしり詰まっていた。
その土はコハクの言うように、普通のものよりずっと黒ずんでいる。
「む、これは……。」