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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第44章 剣と秘薬




「ああ、もうッ。見つからねーな!」

そう言って、コハクは掴んでいた鉱石を後ろに放り投げ、ドカリと腰を下ろした。

中腰の姿勢を長時間続けることが、これほどまでに腰にくるとは思わなかった。

あれから太陽はすっかり姿を消し、星が輝きだしたというのに、残念ながら目的のものは見つからない。

何度か「これはどうだ」というものを発見はしたものの、サクヤに見てもらうと純度が低かったり、クズ鉱石だったりと、まるでダメだった。

「くそー…、あっちィ。」

さらにはこの暑さ。
風通しがいいとはいえ、日が暮れても暑さは一向に引かず、体力を奪った。

「きゅうぅ…。」

コハクに付き合って鉱石を探してくれていたヒスイも限界のようだ。


「ちょっと休憩するか。」

もうあまり時間はないが、このままでは熱中症になってしまう。

コハクは一度鉱山を離れ、すぐ傍の森へと足を踏み入れる。

「きゅきゅッ」

緑の匂いに歓喜したヒスイが、ぴょんぴょこと飛び跳ね、森の奥へと入っていった。

「ヒスイ、あんまり遠くへ行くな。」

もう夜だし、はぐれてしまっては地理に疎いコハクはヒスイを探し出せなくなる。
慌ててヒスイのあとを追った。

幸いにもヒスイはすぐに足を止め、森に流れる小川へバシャリとダイブした。

どうやら、水が欲しかったらしい。

「きゅー!」

あまりにも気持ちよさそうだから、コハクも靴を脱いで小川に入る。

「冷てぇ…。」

山肌から流れ出てきた小川は冷たく、水の流れが心地よい。

コハクは爪の間まで土が入り込んで真っ黒になった手を、川の水でジャブジャブと洗う。


「はぁ…、うまくいかないもんだなぁ。」

正直、もっと簡単に見つかるものだと思っていた。

なぜなら今までは、少し珍しい薬草や動物もそれなりに見つけることができたから。

でもそれは、コハクが島の地理に詳しかったこと、薬草や動物の習性を熟知していたことの結果だ。

なんの知識もない素人が、そう簡単に見つけることはできない。

コハクはここにきて、初めて自分が井の中の蛙であったことを思い知った。



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