第44章 剣と秘薬
確かに、サクヤの言うとおりだ。
日中、街を散策した時には多くの武具屋を見た。
でもどれも、なんかというか…ピンとこなかったのだ。
「武器って自分の命みたいなもんだろ。」
戦場で命を預けるのだ。
武器そのものが命だと言っても間違いではないだろう。
「そんな大事なもんなのに、店先で見て決めるっていうのは、なんか違う気がする。」
「ほう…。」
子供だというのに、なかなか良い考えをしていると感心した。
「だが、なぜ私に?」
「なんでだろ、あんたなら…オレに合うものを作ってくれるんじゃないかと思ったんだ。」
それに、見る目がある。
サクヤはコハクのことを一気に気に入った。
「しかしのぅ、私は自分の腕を安売りはせぬ。」
「金は…時間は掛かるかもしれないけど、必ず払う。オレは将来、医者になるんだ。」
欲しいものを手に入れるのに、大人に頼らず己の力でなんとかしようという心意気も気に入った。
「ふむ、ではこうしよう。おぬしはここで、自分の武器のための鉱石を探す。それができたら、私はおぬしに相応しい剣を打とう。」
自分の武器の材料を、自分の力で手に入れてみせろ…とサクヤは提案した。
「言っておくが、剣1本を打ち出す鉱石はそう簡単には見つからぬぞ。」
かなりの難題だと思う。
けれどコハクは即答で首を縦に振る。
「わかった。自分で探し出す!」
「時間はそうだの…。モモが心配してはいけない、月が真上に上るまでだ。」
日暮れは近い。
時間はそうないけれど、コハクは怯むことなく頷いた。
「絶対見つける! 約束だからなッ」
言って、すぐさま駆け出して行く。
「さて、私も探すとするか…。」
ひとりきりになったサクヤは、自分のための鉱石を探し始める。
すると、腰に差した刀がカタリと震えた。
「なに? 意地悪だと?」
カタカタ…。
「そんなことはない。もし、あの子が本当に必要としているなら、鉱石の方から歩み寄るはずだ。」
すべての万物には心がある。
コハクの心が誠なら、それに応えてくれるものがきっとある。
例えば、彼の父親がサクヤの作った刀を持っているように。
「どんな結果になるか、楽しみだの。」