第44章 剣と秘薬
「ていうか、そんなに知りたいなら、トラ男くんに直接聞いてみなさいよ。」
「えぇ?」
「そうね、それがいいんじゃないかしら。」
「ロビンまで…。」
というか、そんなことを聞いてもローが素直に答えてくれるとは思えない。
「じゃあ逆に、モモはトラ男くんのどこが好きなの?」
「え…!」
そういう質問がくるとは思わなくて、ギョッとしてしまう。
「いいわね。私も知りたいわ。」
そう言われても、モモはローへの気持ちを彼にすら伝えていないのに。
「いいじゃない、教えてくれたって。ガールズトークってこんなもんよ。」
「ガールズトーク…。」
だとしたら、ここで話したことはローの耳には入らないだろうか。
だったら、少しくらいならいいかな…。
「そうね…。優しいところとか。」
「はぁ? 優しい? あのトラ男くんが?」
信じられないとばかりに、ナミは目を見開いた。
「口は悪いけど、ローは優しいわ。わたしのワガママにも付き合ってくれるし。」
彼ほど優しい人を、モモは知らない。
苦言を漏らしつつも、いつもモモのためを想ってくれる。
それが申し訳ないほどだ。
「トラ男くんも、好きな子には弱いってことね。」
「なるほどね~。ごちそうさま!」
「そんなんじゃ…。」
なんだか急に恥ずかしくなって、ブクブクと湯に沈まる。
「とにかく、頑張ってトラ男くんに聞いてみなさいよ!」
そう言って湯から上がる2人に、モモはなにも返せなかった。
『お前、なんか欲しいものはねェのか。』
ふと、昔、ローに言われたことを思い出す。
そしてあの時、モモはこう答えたのだ。
『あなたが、わたしのどこを好きになったか知りたい。』
知りたかった。
別れの時が近づいていたから。
胸に刻みたかった。
あの時の言葉は、ちゃんと覚えている。
でも、今のわたしに、あの時あなたが言ってくれたところは残っているのかしら。
築き上げた信頼も、積み重ねた愛も、すべて失ってしまったのに。
ねえ、あなたはわたしの、どこが好き?
「モモ、そろそろ出ないと上せるわよ。」
「あ…、今、行くわ。」
でも、たぶん、聞けそうにもないわ。