第44章 剣と秘薬
「はふぅ…、気持ちいい。」
ようやくベタベタした汗を流し、温泉に浸かることのできたモモは、その気持ちよさに息を漏らした。
ただの大きなお風呂と思いきや、こんなに身体の疲れが取れるなんて不思議だ。
温泉療法も馬鹿にできないと、効能の書かれた案内板をしげしげと見つめた。
「よーく浸かっておきなさいよ、お肌スベスベになるから。」
海の上で生活する海賊にとって、真水を気にせずに使えることはとても贅沢だ。
せっかくの機会なので、たっぷり堪能していきたい。
モモは少しとろみのあるお湯を肌に擦り込んだ。
「ふふ…。ちゃんと綺麗にならなくちゃね。…トラ男くんのために。」
バシャン!
「……ッ」
思いがけないロビンの発言に、モモは動揺してお湯に沈みかけた。
「な、なな…なに言って…!」
そりゃあ、綺麗にはなりたいけど!
決してそういうためではない!
「ああ。やっぱりアンタたちって、そういう関係なの?」
「やっぱりって…!」
否定したいところだが、今は一応そういう関係なので否定できない。
しかし、モモとローがそんな関係になったのは数日前のことだ。
ナミとロビンがそういう認識をしていたとすれば、ずいぶん早くないか。
「それにしてもトラ男くん、性格はどうかと思うけど、女の趣味はいいのねぇ。」
「え…。」
あたふたしている間に話は進んでしまい、事情を話すタイミングを見失った。
「別によくないと思うのだけど。」
この際、肯定してしまってもいいや…と半ば諦め、2人の話に乗る。
「あら、どうして?」
「だって…、わたしに魅力があるとは思えないわ。」
2人のように強くもなければ、スタイルもよくない。
ローが自分のどこを好きになったのか、見当がつかないのだ。
「なにそれ、本気で言ってんの?」
「だって…、わたしも2人くらい綺麗だったら少しは自信が持てるかもしれないけど。」
お湯に浸かった身体を見下ろし、ため息を吐く。
「ああ、なるほどね。そういうところがトラ男くんのツボなのね。」
「え、どういうところ?」
自分ではまったくわからないのに、ロビンにはわかったというのか。
「そうねぇ。」
教えてほしいのに、ロビンは「ふふ…」と笑って答えてくれなかった。