第9章 裏切り
「メルディアはいるか!?」
ローは、昨夜、酒場宿にいた連中の船を突き止め、襲撃する勢いで乗り込んだ。
「なんだお前、いきなり…!」
近くにいた海賊が、ローを止めようと立ちはだかる。
「メルディアはいるか、と聞いてんだ!」
答えなければ、切る。
スラリと鬼哭を抜いた。
「なんだ、お前、やる気か!?」
「ま、待てッ、コイツは『死の外科医』トラファルガー・ローだぞ!」
ローの悪名はこのグランドラインに広く知られている。
海賊たちは、警戒と怯えの表情を見せる。
「口を割らねェなら、ひとりずつバラバラにしてやるが…?」
“ROOM”
船全体を囲むように、サークルを張った。
「ま、待てよ! メルディアはお前らのとこのクルーだろ? 居所なんざ、知らねえよ!」
手術されては堪らない、と海賊のひとりが喚く。
「…なんだと?」
メルディアがうちの船のクルー?
「だから、メルディアはそっちの仲間だろ? あいつが自分で言ってたんだぜ?」
『私は彼らの仲間なの。ちょっと退屈だから、一緒に飲まない?』
気さえ合えば、例え違う船の人間でも、一緒に酒を酌み交わす。
それが海賊というもの。
「…お前らの仲間じゃないのか?」
「だから、そう言ってるだろ!」
海賊たちは半泣きだ。
嘘を吐いているとは思えない。
では、メルディアは今、誰の船に乗っている…?
嫌な予感がする。
「船長! たいへんです!」
向こうからシャチが大慌てで駆けて来る。
「どうした?」
「島の反対の岸に、ヤツらの船が…!」
ローの予感は的中したようだ。
「……ん。」
冷たい床の感触に、モモは目を覚ました。
軽い頭痛と吐き気がする。
起き上がろうとしたけど、うまく力が入らない。
(確か、わたし…--)
「お目覚めか? セイレーン。」
聞き覚えのある声に、ゆっくりと、視線を上げて声の主を見る。
「…アイフリード。」
『略奪王』アイフリード。
おくり名の通り、彼は悠然とソファーに腰掛け、モモを見下ろしていた。
「どうして、あなたが…。」
「わからんか? 俺がお前を連れて来いとメルディアに命じたからさ。」
(メルに、命じた…?)