第44章 剣と秘薬
「あっつい…。」
昼食を兼ねた街の散策もだいたい終わる頃、モモは慣れない暑さに弱音を吐いた。
「そりゃそうよ、夏島だもの。ていうか、モモの服装がいけないんじゃないの?」
ナミに指摘され、自分の服装を見下ろす。
半袖の膝丈ワンピースに、薄手のストッキング。
モモにしてみれば薄着だ。
しかし、ナミの言いたいことはわかる。
彼女や他の仲間たちは男女問わず、もっともっと薄着だから。
ナミはそれは下着なのでは? と疑うような露出度のファッションだし、ロビンはナミほどではないにしろ、くびれた腹部を惜しげもなく出している。
男たちは男たちで、裸の上半身になにか引っ掛けただけのような、筋肉丸出しの服装だ。
(わかってる。わかってるけど…、マネできないわ。)
なぜならモモは自分の身体に自信がない。
内心ため息を吐きながら、ナミとロビンの身体を盗み見た。
非戦闘員と言いながら、普段から身体を使っているのだろう。
手足や腹部はキュッと引き締まっている。
それでいて胸には、はちきれんばかりに脂肪がついているのだから羨ましくてならない。
(まあ、羨んだって仕方ないことなんだけど。)
例え彼女たちのスタイルを自分が手にしたとしても、同じになれないことはわかっている。
でも、今さら羨ましいと感じてしまったのは、やはり、ローの言葉があるからかもしれない。
(俺の…女…か。)
ふと、どうしてローは自分にそこまでこだわるのだろうと思った。
自分は地味で、ナミやロビンたちのように強くもない。
それなのに、ローはどうしてモモなのだろう。
「汗掻いてベタベタね。ちょうどいいわ、今日は街の温泉宿に泊まりましょう。」
ナミが暖簾の垂れた建物を指差したので、モモは慌てて考え事を中断した。
「温泉…?」
「ええ。この島は海底火山の影響で、温泉がとても有名なのよ。」
良質な温泉は、疲労回復はもちろん、美肌効果も期待できるらしい。
「美肌…!」
初めての温泉はモモの好奇心をくすぐる。
なにより温泉に浸かれば、彼女たちのように少しは魅力的になれるのでは…と淡い期待が灯った。