第44章 剣と秘薬
ナミの言っていたとおり、街はとても活気づいていた。
「わぁ、ずいぶん賑やかな街ね。」
「そうでもねェだろ。」
物珍しさにキョロキョロするモモとは反対に、ローはそれほど興味がなさそうだ。
数えきれないほどの航海を重ねた彼は、こんな街くらいなんでもないかもしれないけど、モモはゆっくり街を散策することなど久しぶりだ。
シャボンティ諸島でも魚人島でも、事件に巻き込まれてそれどころじゃなかったのだ。
「それにしても…、なんだか小さなお店が多いのね。」
大通りにはズラリと店が立ち並んでいるが、どれも小さくハリボテのような店ばかりだ。
「ああ、屋台だな。」
「やたい…?」
「出し仕舞いのできる簡易店だ。祭りなんかでよく見かけるだろ…って、わかんねェか。」
要は持ち運びのできる小さなお店らしい。
ここの通りは屋台街らしく、様々な商品を取り扱った店がところ狭しと並んでいた。
「まあ、だいたいが食い物屋だな。」
皮をパリパリに焼いた鳥、丸く練った生地を揚げて砂糖をまぶしたもの。
嗅ぎ慣れない香辛料の匂いや、美しい飴細工の数々にモモは目を奪われる。
「んまほーッ! おっちゃん、これくれ!」
早速ルフィが店のひとつに飛びつき、大きな肉料理を指差した。
「うんめー! これ、あと10個くれ!」
「ルフィ、いい加減にしなさいよ!」
間髪入れずにおかわりをするルフィをナミが叱る。
その様子に苦笑したモモの視界に、あるものが留まった。
香ばしいコーンの上に白く巻き上げられた冷たいクリーム。
あれは…。
「ソ、ソフトクリーム…!」
雷に撃たれたような衝撃を受け固まるモモに、コハクが首を傾げる。
「ソフトクリーム?」
ああ、そうだ。
コハクは食べたことがないのだ。
あんなに、あんなに美味しいものを。
「甘くて冷たくて美味しいのよ。食べたい?」
「いや、オレ甘いものはあんまり…。」
「食べたいよね!」
「……うん。」
本当は自分が食べたいんだろうなぁ…という空気を察し、頷いてあげた。
「買ってきてあげる!」
ルフィに負けない勢いで走っていく母を見つめ、そっと呟いた。
「母さん、財布持ってねーじゃん。」
「……。」
無言のまま、ローが後をついていった。