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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第44章 剣と秘薬




「い、言われなくても、人前であんな格好しないわ。」

赤面した表情を見られたくなくて、ふいと顔を背けながら、なるべく素っ気なく言った。

「どうだかな。お前は割と流されやすいじゃねェか。」

「そんなこと…。」

残念ながら、ないとは言えない。
だって、まさに今目の前に自分を流した男がいるのだから。

「もう少し自分の行動には気をつけるんだな。お前が誰のものなのかを自覚しろ。」

スルリと伸びた指が、モモのうなじをくすぐった。

「……ッ」

不意打ちにビクリと反応してしまい、慌ててローの方へ向き直った。

以前なら、ローはこんな過度な接触はしなかった。

けれど“俺の女”という肩書きが、彼の遠慮や手加減という壁を壊してしまったらしい。

近すぎる距離に非難めいた視線を送るが、ローは楽しげに笑うだけ。

まるで手のひらで転がされている感覚が、とても悔しかった。


「あなたこそ、その強引すぎるところ、直した方がいいわ。」

「俺のどこが強引だと?」

嘘でしょ、無自覚…?

少しは言い返してやろうと思ったのに、自覚すらしていないとは恐れ入る。

「強引じゃない人は、いきなり“俺の女になれ”とか言わないの。」

ローが強引でないなら、世の中の人はたいてい消極的だ。

「まるで俺が無理やりしたみたいな言い方だな。了承したのはお前はずだが?」

「それはそうだけど…。」

そこを突かれると痛い。


「それに、俺はこんなふうなやり方で女を作ったのは初めてだ。」

こんなふうに、なにがなんでも欲しいと思ったのは初めてだからだ。

「嘘よ。」

けれどモモは、やけにハッキリと否定した。

「あ? どういう意味だ。」

珍しく本音を話したのに嘘とまで言われ、少々不愉快になる。

「だって、あなた昔も…--」

言いかけて、モモはハッとしたように口をつぐむ。

「……昔?」

いつの頃の話だ。
第一、モモはローの過去など知らないだろう。

「…なんでもないわ。」

そう言うと、モモは追求を避けるように話を変えた。

「島、楽しみね。」

「……ああ。」

なんとなく引っかかるものがあったが、なぜだか彼女が泣きそうに見えて、ローも敢えて追求はしなかった。


バカみたい、わたし。
これじゃあまるで、浮かれてるみたいだわ。



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