第44章 剣と秘薬
次の日、照りつける日差しが肌を焼く中、海平線上に島が見えてきた。
「見て、ベポ! あれが次の島よ!」
「ああ、うん…。」
島発見の嬉しさから はしゃいだように声をかけたが、隣の白クマは元気がない。
だらりと寝そべり、舌を出している。
今にも溶けそうだ。
「…大丈夫? 船内に戻ったら?」
ベポはとことん暑さに弱い。
この暑さは肉体的にも精神的にも堪えるらしい。
「やだ~。船内はむしむしするから…。」
日差しがないだけマシではないかと思ったが、そういう問題ではないようだ。
「あぁ~…、毛皮…脱ぎたい。」
「…刈ろうか?」
見た目が多少貧相になりそうだが、暑さに参るベポの姿は見ていて心苦しい。
本気で誰かにハサミかバリカンを借りに行こうかと考えた時、後ろから声が割り込んでくる。
「お前が丸刈りになろうがムダだ。逆に皮膚が焼けるだけだから止めとけ。」
「あ…、キャプテ~ン。」
先に視線を向けたベポが彼を呼ぶ。
「……。」
モモはというと、なかなか振り向けなかった。
なんというか、どんな顔をしたらいいかわからないのだ。
「でも、暑いんだよぉ。」
ものすごくだらしない顔で見上げてくるベポに、ローはため息を零す。
「だったら少しは痩せろ。お前は太りすぎだ。」
確かに、たっぷりとしたお腹についた脂肪は、毛皮なんかよりよほど暑そうだ。
「ムリ…、ゴハン…我慢したくない。」
夏バテのくせに食欲だけは旺盛な白クマは、そう言うとベチャリと床に顔を落とした。
「そこをどけ。見ているだけで暑苦しい…。」
同情した様子もなく、ローはベポの脇腹を軽く蹴った。
「だったらトニー屋のところに行ったらどうだ。ヤツら、呑気にプールなんか出してやがる。」
「プール!?」
先ほどまでと一転、ガバリとベポは顔を上げる。
「ここにいても暑苦しいだけだ。お前も行って、ついでに身体も洗ってこい。」
日頃からベポの風呂嫌いに頭を悩ませるローは、これを機にその問題も解決したいようだった。
「うん! ちょっと行ってくる!」
いつになく俊敏な動きとなったベポは、早足でチョッパーたちのもとへ駆けていった。