第44章 剣と秘薬
「サクヤは…、どんな力があって政府に追われているの?」
「ん…?」
気になってつい尋ねてみれば、サクヤは意味深に微笑んだ。
あまり知られたくはないのかもしれない。
モモも、力のことはあまり言いたいことではないし。
「ごめんなさい、言いたくなければ気にしないで。」
「ふふ、そういうことではないよ。」
そう言うと、サクヤは腰に差した刀をそっと撫でた。
「私の一族は物に宿った魂の声を聞くことができる。我々はその魂を付喪神と呼ぶ。」
「付喪神…。」
それは100年経った古い物が化ける妖怪の名前だったと思う。
「その能力のせいか、我が一族は物作りを生業にする者が多い。私も鍛冶士をしておる。」
しかしサクヤの一族が作る物は、なぜだか不思議な力が宿るのだという。
「私が作る刀も、なぜだか妖刀になってしまう。」
「妖刀…。」
普通の刀とは違い、持ち主を選ぶという妖刀。
その分、とてつもない力を秘めているとか。
確か、ローの愛刀も妖刀だったはずだ。
「ヤツらは、そういう能力を求めているのだろう。」
おかしな話だ。
どうして素晴らしい物を作れるからといって、政府に追われなければならないのか。
「うるさいのぅ…。」
「え……?」
モモはなにも話していないのに、突然「うるさい」と言われて驚く。
「おぬしの指輪だ。先ほどからずっと、私に訴えかけてくる。」
「指輪が?」
左手の薬指にはめた指輪を見るが、特に変わった様子などない。
「その指輪…、正確にはそのエメラルドに魂が宿っておる。」
確かに、このスターエメラルドには今まで何度も助けられてきた。
あまり深く考えていなかったけど、不思議な力があるのかもしれない。
サクヤが言いもしないのにモモの状況を理解しているのは、この指輪が彼女に教えたのだろうか。
「指輪は、なんて言ってるの?」
いつも助けてくれるこの指輪が、なんと言っているのか知りたかった。
「…おぬしに“早く幸せになってほしい”と言っているよ。」
「え……。」
予想外の言葉は、モモの胸を突いた。