第44章 剣と秘薬
「はぁ……。」
雲ひとつない快晴な空の下、モモは大きくため息を吐いた。
あれから薬を飲んだため、あの嫌な頭痛はすっかり止んだが、それとは別な問題がモモの頭を痛ませる。
それもこれも、昨夜の件だ。
あの後、戸惑いながらも支度を終えたモモは、みんながいるサウザントサニー号へとやってきた。
朝食の時間ということもあり、クルーたちはすでに起きていた。
そして口々に言うのだ。
「モモ、昨日は大丈夫だった? だいぶ酔っ払ってたみたいだけど。」
「モモちゃん、ゴメンな。君がそんなに酒に弱ぇって知らなくって。」
「モモ、二日酔い平気か? 顔色悪いぞ。診察するか?」
声をかけられるたび、ローの言うことが本当なのだと思い知らされる。
記憶が曖昧だったのは、そういうことだったのだ。
しかし、酔っ払っていたからといってすまされる問題ではない。
モモがローを誘ったのは事実なのだから。
でもなにも、ローの女になることを了承する必要はなかったのではないか。
今になってそんなことを思ったが、他に償い方もわからないし、今さら取り消すこともできない。
「はぁ……。」
「なんじゃ、先ほどから辛気くさい。」
再びため息を落としたところで、背後から声をかけられ、モモは飛び上がって驚いた。
「サ、サクヤ…。」
いつからいたのだろう。
話しぶりからして、モモのため息を何度か聞いていたようだ。
「悩みごとか? どうせ、あの男のことだろう。」
「……。」
当てられてしまった。
でも、少し考えればわかってしまう。
この船でモモの過去を知っているのは、サクヤだけなのだから。
「ホワイトリストのことか?」
「あ……。」
そういえば、すっかり忘れていた。
そのことも話さなくてはいけないのに。
「なんじゃ、悠長な。早く話してしまえ。先延ばしにするとろくなことがないぞ。」
サクヤの長い白髪が風に吹かれてサラサラと舞う。
彼女もまた、ホワイトリストの手配者。
けれどモモはサクヤがどんな能力を持っているのか知らなかった。