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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第43章 覚悟




“家族”

それはかつて、ローが失ったもの。

家族だけではない。
友も家も思い出も。

遥か北の海、あの白い町でローはなにもかもを失った。

許すものか。
政府も病魔も運命も。

全てを恨んで、ローは海賊に。
そして医者になったのだ。

あれから十数年、コラソンと出会い、ドフラミンゴを討ち、ローの環境は大きく変わった。

己の船を持ち、仲間ができた。
まあ、認めたくはないが、友と呼べなくもないヤツらもできた。

過去の思い出は今も苦しいままだけど、それを乗り越えられる強い意志も持てた。

けれど、ひとつだけ。
ただひとつだけ、失ったままなものがある。


“家族”


かけがえのない仲間ができても、気心の知れた友ができても、それだけは取り戻せなかった。

でも…。


『ローはオレにとって、家族だから…。』


今、目の前にいる少年は、そんな自分を家族だと言う。

大切な父親を失うきっかけとなった、こんな自分を。

胸の中に、熱いなにかが湧き上がった。

それはモモに感じたものと、似ているようでまったく別のもの。

その正体を、ローはとっくに知っていた。


喜び、そして愛しさ。

ほんの少し前まで、怒りと恨みしかなかった自分に、こんな感情があるなんて知らなかった。

モモとコハクに会うまでは…。


欲しいものがある。

なりたいものがある。

それを手に入れるには、誰より先に、この少年に話さねばならないことだった。

「俺は…、モモが好きだ。」

ローにとって2度目の告白は、彼女の息子へと告げられた。

そんな言葉が意外だったのか、コハクはぱちくりと瞬き、それから呆れたように笑った。

「…そんなこと、知ってるよ。」

ついでに言うと、モモの気持ちもちゃんとわかっている。

モモには鎖のような決意がある。
まるで自分が幸せになっちゃいけないような、そんな決意。

でもそんなもの、さっさと取っ払ってほしかった。

「オレは母さんさえ幸せなら、それでいいよ。」

だからどうか、断ち切ってくれ。

“父さん”という鎖を。



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