第43章 覚悟
ああ、いつもそうだ。
『あなたって、呆れるほど優しい…。』
『別に、どうもしないよ。』
この親子はいつだって、ローの想像の先をゆく。
だからなのかもしれない。
自分じゃ及ばないって思うから、これほど手に入れたいと願う。
コハクの父親が嫌いだった。
モモの心にずっと住み着いているのが。
コハクが誇らしげに語るのが。
仕方がないと思いつつも、いつもいつも気に入らなかった。
その理由を考えないようにしていた。
それは、心のどこかで思っていたからかもしれない。
“家族の絆”には適わないと。
けれど、それでは前へ進めない。
だからしっかり向き合わねば。
コハクの父親を気に入らない理由。
考えないようにしていた、その理由。
蓋を開けてみれば、なんとも単純で、納得がいくものがそこにあったのだ。
「もし、父さんがローに殺されていたんだとしても、それは父さんの人生だ。オレがとやかく言うことじゃない。」
想像してみる。
顔も知らない父親が、ローに破れゆく姿を。
海賊同士の争いだ。
当事者でない自分が口を出すところではないし、父親自身それを望まないだろう。
でも…。
「それはお前の本心か?」
「本心…?」
「本当にお前は、俺を恨みを感じないのかと聞いている。」
「……。」
うん、まあ、そうだよな。
ローは頭のいいヤツだ。
こんな綺麗事、そんな簡単に信じられないよな。
実際、コハクの言葉には嘘がある。
父親の人生だから、なにがあろうとも恨まない。
それは嘘。
(…オレはズルいな。)
ローはそれなりの覚悟をもってコハクに告白をしたというのに、自分が本心を語らないのはズルい。
真心には真心をもって応える。
いつもモモに、そう教えられてきたではないか。
子供だからとバカにされてもいい。
薄情なヤツと軽蔑されてもいい。
きちんと伝えなければ…。