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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第43章 覚悟




傲慢で強引な嫌なヤツ。

それが、コハクが感じたローの第一印象だった。

実際、あながち間違いではないと思う。

俺様気質だし、呆れるくらい強引。

でも、いつからだろう。

そんなローの手を、大きいと感じるようになったのは。


『コハク、ジャンバールを頼めるか?』


ああ、そうだ。
あの時からだ…。

それは海賊となったコハクにとって、初めての冒険。
初めての島での出来事。

不思議なシャボン玉が漂う島。
シャボンディ諸島。

あの島で事件は起こった。

天竜人とかいう、いけ好かないヤツらにモモが連れ去られたのだ。

すぐに助けにいきたかったが、ジャンバールが大ケガを負ってしまい、そちらを優先するしかなかった。

けれど、時間が経ってしまえばモモの奪還は極めて難しくなる。
そんな状況。


『オレにジャンバールを任せてくれ!』

思えばあの時、モモの奪還ではなく、ジャンバールの治療をさせてくれと言ったのは、どうしてだったのだろう。

ローならば、必ずモモを救い出してくれると思ったからか。

それとも、ローに医者として信じて欲しかったのか。

どちらにしてもおかしな話だ。

だって、あの時のコハクたちは、まだ出会ってそれほどの時間が経っていたわけではなかったのに。

信じてる。
信じてほしい。

どうしてそんなふうに思ったのだろう。

信じてもらえるわけがない、無茶な提案をしている…。

そう思った矢先だった。
ローの手が、コハクの頭をふわりと撫でたのは。


“信じる”

それがローの出した答え。

なあ、ロー。
お前は知らないだろ?
オレがあの時、どんな気持ちになったのか。


そう、あの時からだ。
ローの手を、大きいと感じるようになったのは。

船には他に何人も“大人”がいて、みんなそれぞれ手が大きいのに、ローだけが特別と思えた。

その大きな手に撫でられると、なんだかとても嬉しくて温かな気持ちになった。

モモさえ幸せならそれでいいと思っていたのに。

いつからだろう。
ローに認められたいと、その背中を追いたいと思ったのは。

この感情をなんと呼ぼう。

なんと呼んだらいいのか、コハクは知らない。



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