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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第43章 覚悟




一瞬、頭が真っ白になった。

ローの言った言葉が、想像もしていないことだったから。

そしてすぐに、「ああ、そういうことか…」と納得する。

ローの様子がおかしいと感じた理由。

たった一言で、聡いコハクはそれを理解した。

なにがあったかはわからない。

けれど、ローは知ってしまったのだろう。

コハクの父親を。


「オレの大切な人が父さんだった場合…?」

「そうだ。」

先ほどは大切な人がモモだった場合。

でも、それがコハクの父親だったら理由が大きく異なってくる。

“大切な人がローのせいで死んだなら”

コハクは、ローと父親の関係がどのようなものだったかのか知らない。

だから想像してみる。

例えば、仲間同士でローを庇って死んだなら。

例えば、敵同士でローが殺したなら。


「……。」

ローが、殺したなら。

ルフィとローは友好的な関係を築いている。
でも、世間の海賊がみんなそんな関係じゃないことくらい、コハクだって理解していた。

海賊王の椅子はただひとつ。

戦って戦って、最後に勝ち残った者こそ、その椅子を手に入れられる。

コハクの父親は海賊。
ローも海賊。

だから当然、あり得ることだ。

もし、ローが父さんを殺したなら?

「きゅうぅ…。」

ヒスイが不安そうに鳴く中、目を瞑り、考えてみた。


ずっと、父さんに会いたかった。

コハクは父親を知らない。
名前も、顔も。

ただ、時折モモに父親のことを尋ねると、彼女はとても誇らしそうに語るので、きっとすごい人物なのだと思っていた。

でも、コハク自身“父親”という存在を知らないからか、恋しいとかそういう感情は芽生えなかった。

父親に会いたかった。

モモがずっと、想っていたから。

いつかモモと2人海へ出て、会いに行きたかった。


けれど…。


波が船にぶつかり、砕ける音がする。

今コハクは、広い海の上にいた。


なあ、父さん。
オレはいつから、こんなに薄情なヤツになったんだろう。



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