第43章 覚悟
「もし、オレの大切な人がローのせいで死んだなら…。」
コハクはデッキの柵に手をついて、海を眺めながら呟いた。
そんな自分を隣でヒスイがつぶらな目をして見つめている。
シルフガーデンではいつも、ヒスイと2人、モモを守ってきた。
なあ、相棒。
オレの考え方は間違っているかな?
「もし…そんなことが起きても、オレはどうもしない。」
これが、コハクの出した答えだった。
「どうも…しない?」
一方、コハクの答えを聞いたローは戸惑っていた。
どんな答えも受け止める気でいたけど、彼の出した答えはあまりに予想外のことだったから。
「その大切なヤツがモモだとしてもか?」
もしローのせいでモモが死んだなら、コハクにとってこれ以上許せないことはないだろう。
それでも同じ答えが出せるのか…、とさらに切り込む。
しかし、こちらを振り向いたコハクの表情は想像以上に真面目なものだった。
「言えるさ。オレはどうもしない。」
「…なぜだ。」
理由がわからないローに、コハクは答えの理由を語り始める。
「もし母さんがローのせいで死んだなら、それはきっと、オレのせいでもある。」
強敵に遭遇して守りきれなかったら。
難病や大ケガを負って救いきれなかったら。
それはローのせいだけじゃない。
コハクにだって責任はある。
ローならば、コハク以上の力でモモを助けようとするだろう。
全力を尽くして、命を懸けて。
それでももし、そんなことが起きたなら…。
そんな彼を、どうして自分が責められよう。
「オレが憎むべきは、自分の弱さだ。ローじゃない。」
嬉しかった、ただ単純に。
コハクはローが思っていたよりもずっと、強い男だったから。
でも、違う。
そうじゃない。
これは助けられなかったのがモモであったら…の話だ。
実際にローが助けられなかったのは、モモじゃない。
助けられなかったのは…--。
「大切なヤツが…お前の父親だったとしてもか?」
「え…?」
コハクの瞳が驚きに見開かれる。