第43章 覚悟
“もし、モモが俺が原因で死んだらどうする?”
昨日、ローがコハクに聞いたことだ。
突拍子もない質問だったけど、なにか大切なことなのだとコハクは理解した。
だから、考えたのだ。
もしもモモが死んだとして、それがローに原因があることだったら。
考えにくい事態だが、コハクは自分の中でいくつかの仮定を立ててみた。
例えば、強敵に遭遇してローがモモを守りきれなかったとしたら。
例えば、難病や大ケガをモモが負い、ローの腕をもっても治しきれなかったとしたら。
どれもこの広い海の上でなら、誰にでも起こりうること。
そんな時、自分は…。
「昨日聞かれた質問に、答えてやるよ。」
夜のデッキでひとりローを待っていた少年は、生意気そうに応えた。
あの時、ついコハクにあんな質問をしてしまったけど、すぐに後悔して話を切り上げた。
だから、コハクがあの問いに答える必要などない。
けれど、彼ならばあの質問をローがどんな想いでしたことかを、その重要性をなんとなく感づいていただろう。
そんなコハクが出した答えをローは受け止めなければならない。
どんな答えであっても、ローにはその責任があるのだ。
「あれから考えてみたんだ。もし、母さんがローのせいで死んだなら、オレはどうするかなって。」
「……。」
自分から尋ねておいて、コハクの答えを聞くのは少し怖い。
怖いだって?
ふざけている。
格上の相手にだって躊躇いなく戦いを挑むのに、こんな子供の答えが怖いだなんて。
でも、その理由はわかっている。
先ほどのモモとの会話で、その正体がわかったのだ。
怖いと思うのは、相手がローにとって、大切な存在だから。
そう、いつの間にかローにとってのコハクは、モモと同じように大切な存在になっていた。