第43章 覚悟
「ふぅ……。」
気を失ったモモの身体をタオルで綺麗に清め、ローはひと息ついた。
正直、まだ全然満足していない。
一度灯ってしまった熱はまだ体内でくすぶっているし、彼女の白い肢体はとても扇情的で、治まった欲望が今にも頭をもたげそうだ。
けれど、安らかに寝息を立てるモモを襲うようなマネはいくらなんでもできるはずもなく、風邪を引かないよう、そっと毛布をかけてやる。
触り心地の良い髪を撫で、しばらく甘い余韻に浸った。
このまま柔らかな身体を抱きしめ、共に眠りにつきたいところだが、そうもいかない。
ローにはまだ、やらなくてはいけないことがあるのだ。
ようやく固まった、自分の想い。
それを伝えなくてはならない人がいる。
モモの頬に軽く口づけを落とすと、ローは脱ぎ捨てた衣服を身に纏う。
1枚服を着るたびに、身体が重くなってくる気がする。
ああ、これが緊張というものなのか…と、自分らしくもない感情に戸惑う。
それでも、決着をつけなくてはいけないことがあるんだ。
ローはもう一度、眠るモモの姿を見ると、気を引き締めて部屋から出ていった。
その頃、ハートの海賊団のデッキには、ひとつの人影があった。
いや、正確にはひとりと1匹。
ひとつは、この船で唯一の子供。
幼い医者の卵、コハクのもの。
そしてもうひとつは、彼の相棒、緑の化身 ヒスイのもの。
宴も終わり、誰もが酔いつぶれて眠る中、コハクはヒスイと共に待っていた。
待つといっても、約束をしたわけではない。
来るかどうかもわからない。
でも、その人はきっと来るだろうと思ったのだ。
彼から投げかけられた問いを、今日1日、ずっと考えていた。
一方的に打ち切られてしまったけれど、あれはたぶん、彼にとって重要なことと思ったから。
モモが酔って途中退席したため、考える時間は嫌ってほどできた。
そして今、コハクの中には答えがある。
ガチャ…。
背後でドアが開く音がして振り向くと、予感していた通り、待ち人がこちらへ歩んでくるところだった。
「遅せーな。待ちくたびれたよ、ロー。」
約束なんかしていないのに、そんなコハクにローも「悪かった」と応えた。