第43章 覚悟
「もし、あの時ああだったら…なんて、誰しもが考えることだわ。」
エースのことだけじゃない。
モモはいったいどれほどの分岐点に立たされたことか。
例えば、あなたと別れた6年前とか…。
「でも、なにが正解だったかなんて誰にもわからない。」
もしローがエースを助けていれば、代わりにルフィが死んでしまったかもしれない。
もしかしたら、ロー自身が命を落とすこともある。
そうなれば、ドフラミンゴは今も七武海のまま、偽王として君臨していたことだろう。
先のことがどうなるかなんて、誰にも予測できない。
だからこそ人生というものは、苦しくても生き抜く価値があるのではないか。
「確かにエースはわたしにとって大切な人だけど、あなたが過去を悔やむ必要はないわ。」
「だが…--」
なおも己を責めようとするローの口を、モモは指を当てて塞いだ。
「…わたしはあなたに感謝したいの。」
「感謝…?」
そんなもの、される覚えはないと目を瞬かせる。
「ロー、あなたがいなかったら、きっとルフィはここにいなかった。」
あの場にローほどの腕をもった医者がいたから、ルフィは一命をとりとめたのだ。
もしあの時、ローがルフィを助ける選択をしていなかったら、彼は今、ここにはいない。
エースはきっと、自分が助かるよりも遥かにルフィの無事を願ったことだろう。
「ルフィを助けてくれてありがとう。」
ルフィがいなければ、モモはずっとエースの死に捕らわれたままだった。
そんなルフィは、ローが救った。
「ありがとう、ロー。」
だから、あなたに感謝したい。
「……ッ」
ローの瞳が、戸惑うように揺れた。
優しい人。
きっと彼は苦しんだのだろう。
モモのために…。
あなたはとても強い人。
でも世界には、強い彼さえも傷つけるものがあるのだ。
「大丈夫。」
手のひらをそっと、彼の胸に当てた。
生きる証の鼓動が、手のひらから伝わってくる。
「わたしが守るわ。」
絶対に、あなたを死なせたりしない。
今度こそ、わたしが…。
そう言おうとして、モモの意識は限界を迎えた。