第43章 覚悟
ローのどこに惹かれたのか?
もし、そう尋ねられたらわたしはなんと答えるだろう。
強いところ?
強引なところ?
不器用なところ?
いいえ、違うわ。
「バカね、そんなことをずっと気にしていたの?」
その言い方が本当に呆れているように聞こえるものだから、ローは反論する。
「そんなこと…? 俺があの時、オペを施していたら、火拳のエースは死ななかったかもしれないんだぞ。」
それは事実で、モモにしてみれば許せないことのはずだ。
それなのに、モモは優しい眼差しのまま、ゆっくりと首を横に振る。
「もしも、かもしれない。…そんなことはわたしも何度も考えたわ。」
もしも、あの場に自分がいたら。
歌が唄えたら、エースを救えたかもしれない。
何度も繰り返し考えた。
でも、それはたぶんモモだけじゃなくて、ルフィや白ひげ海賊団のクルーとて同じこと。
戻れない過去を悔やむのは、みんなにとってエースが大切な人だったから。
けれど、ローにとってのエースは違う。
モモとローの空白の6年間はとても長い時間だったけど、彼の口振りからして、エースとの接点はおそらくオバケの森の一件だけでしかない。
過去に一度会っただけの男を、命を張って助ける…なんてこと、無理な話だ。
ローには大きな目標があって、守るべき仲間もいるのだから。
それでも、こうして悔いているのは、いったいなぜか。
それはあなたが、呆れるほど優しいから。
エースがわたしにとって、大切な人だと知ったからでしょう?
ローの選択は決して間違っていない。
それなのに、モモのために過去を悔いてくれる。
そんなところが、堪らなく優しくて、堪らなく愛しい…。
わたしがあなたに惹かれたのは、あなたがこんなにも優しいから。
昔も今も変わらない。
そんなあなたに、どうしたって惹かれてしまう。
あなたに出会えたことが、こんなにも幸せだわ。