第43章 覚悟
酔っている人間に真面目に話したって無駄だ。
そう思う一方で、酔っている今なら、モモの本音が聞けそうな予感もしていた。
「お前と火拳のエースは…、特別な間柄なんだろ。」
「エース?」
ローの口からエースの名が出るとは思っていなかったのか、モモは僅かに驚く。
その驚きの意味が知りたくて、ローは注意深くモモの表情を探ったが、それだけで彼女の心がわかるはずもない。
「特別…。そうね、確かにエースは特別な人だわ。」
モモにとっては、エースは人生を変えてくれた人のひとり。
特別なことには違いない。
「お前はアイツが、どうして死んだのかを知っているか。」
酷な質問だと思った。
そして、わかりきった質問。
昨夜、モモとルフィが彼の死について話していたのを、ローは知っている。
案の定、先ほどまで朗らかな表情をしていたモモは顔を曇らせた。
しかし、それも束の間のこと。
モモの中で“エースの死”についての後悔はすでにない。
昨夜の内に心の整理はついているのだ。
だから、ローの質問にも答えられる。
「知っているわ。ルフィから、真実を聞いたもの。」
ずっと聞きたかったこと。
それが聞けたのも、こうしてローが外に連れ出してくれたおかげ。
そのことに関してもローにお礼を言いたかったが、彼はなぜだか厳しい顔をする。
「イヤ、お前は知らない。」
聞いてきたくせに、やけにハッキリ否定され、モモは訝しんで首を傾げる。
「わたしがなにを知らないの?」
ローの意図がわからない。
それはモモが鈍感だからか、それとも酒の影響か。
「…お前が知っているのは、麦わら屋から見た真実にしかすぎねェ。」
「……。」
言いたいことはわかる。
モモが知ったのは、ルフィから見た真実で、他の誰からのものでもない。
例えば、この話を政府側の人間から聞いたのならば、まったく違う真実にたどり着くのだろう。
なんとなく、わかった。
つまり、ローにはローの真実があるのだ。
けれど、それほどまでに言い辛そうにする理由はいったいなにか。
想像もできない理由に頭を悩ませた時、ローが静かに口を開く。
「あの日…、あの場に俺もいた。」