第43章 覚悟
コハクをも離したモモは、自由になった手をくるりと回しながら、さらに軽快にステップを踏んだ。
『だけど、それはつまりのところ、モンスターのひとつも倒せないってことで、この身体と想いひとつ、信じて突き進め!っていう。』
唄っているうちに、どんどん楽しくなってきた。
「いいぞ、姉ちゃん! スーパーだぜ!!」
声をかけてくれる人に笑顔で応える。
(気持ちいい…。)
人前で歌を見せ物のように披露したことはなかった。
それはひとえに能力のせいではあるが、こんなに楽しいのなら、どうして今まで唄ってこなかったのかと疑問にすら感じる。
『戦ううちに、わかってきたの。この世界はなんかおかしいな。』
好きなことも自由にできない。
それはどうしてだろう。
世界政府だ。
あんなものがあるから、モモはこうして隠れながら生きていくしかない。
でもそれは、おかしいと思う。
自由に生きて、なにが悪い?
『気づいたのにわたしは不思議と、この世界で生きてみたくなる。』
そんなふうに感じるようになったのは、きっと隣に自由を愛するあなたがいてくれたから。
『わたしにできることを、やってみよう!』
そう思えるのは周りにみんながいてくれたから。
『この海を冒険するうちに、ひとり、ふたり、3人4人…。』
ベポ、シャチ、ペンギン、ジャンバールをそれぞれ指差す。
『仲間たちが増えてきては“一緒に頑張ろう”って手を伸ばす。』
仲間たちがいるから、強くなれる。
こんなにも日々が輝く。
ひとりじゃできないことも、きっとできる。
ブルックがモモの歌に合わせてバイオリンを奏でた。
その旋律に乗り、モモはさらに足を進めた。
わたしの中の日々がこんなにも輝く理由。
その源に向かって。
『何度、挑戦してもやり直し。ヒーローになんてなれないから。』
少し離れたところに立つ、あの人のもとへと進む。
しかし、あと数歩のところで酔った足は本来の運動神経の悪さを増幅させ、簡単に絡ませた。
けれど、傾ぐ身体が床に叩きつけられることはない。
ドサッ。
「……オイ。」
本日2度目の転倒は、ローの腕によって妨げられた。