第2章 解かれた封印
その後モモは予定通り病院に向かい、血止めの塗り薬が欠品していることを詫びて残りの薬を納品した。
帰りに市場に寄ると、心なしかいつもより賑わっているように感じた。
(なんだろう?)
「ああ、港に大きな船が着いたのさ。俺もまだ見に行ってはいないけど、これから忙しくなるぞー!」
馴染みの店でいつもと様子が違うということを身振りで伝えると、そんな答えが返ってきた。
(なるほど、船が来たのね。)
大きな船は補給のため、大量に商品を買い込む。
商店にとっては、絶好の売り出し時だ。
(しばらく外に出るのは止めた方が良さそう…。)
なるべく外の人との接触は避けるようにしている。
モモはしばらく家に引きこもるために普段より多めに買い物をした。
「ねぇねぇ、絶対ナイショだよ?」
「なぁに?」
「薬屋さんのお姉ちゃん、ほんとは魔法使いなんだよ。」
「うっそだー!」
「ウソじゃないよ、わたし見たもん!お姉ちゃんが歌をうたったら、ミーコのケガがあっという間に治ったの!」
「えー?ほんとー?」
「ほんとに、ほんとだよ!」
「お嬢ちゃん、今の話を詳しく聞かせてくれるかな?」
突如背後から掛けられたら言葉に、少女はビクリと肩を跳ねさせた。
「あ…、えっと…。」
「隠し事をすると、お嬢ちゃんを海の向こうへ連れて行くよ。」
男の言葉に、少女はヒッと息を飲んだ。
嘘に聞こえなかったから。
だって、その男は……。
海兵だったから。