第43章 覚悟
(……なにをやってんだ、アイツらは。)
ローはついさっきコハクが駆けていった方向を、無言で見つめていた。
なにを慌てていたのかは知らないが、コハクが向かった先にはモモがいた。
船の上なんだから、なにも心配する必要なんてないのに、モモになにかあったのか…と思うと、ローも気が気ではない。
かといってコハクのあとに続いて彼女のもとへ行くこともできず、こうして遠目から様子を窺うしかない。
ドテッ。
「……!」
コハクに手を引かれたモモは、足下がおぼつかないのか、派手に転ぶ。
(酔ってんのか?)
彼女にしては珍しい。
それに、酒を飲んだ様子はなかった。
なぜそんなことになったのかと首を傾げると、先ほどサンジがデザートにサバランを持ってきたことを思い出した。
(まさか、アレで…?)
いくら酒を使用しているといっても、たかがケーキだ。
日頃から酒が飲めないと話していたことは知っていたけど、まさかこれほどだとは思わず、唖然とした。
チョッパーまでもが駆け寄り、これ以上目立つ前に自分も行った方がいいのかと考えあぐねていると、彼女が楽しそうにチョッパーを抱え上げた。
チョッパーの奇声が上がり、いよいよ無視できない状況になってきた。
(……仕方ねェ。)
麦わらの一味の前で、モモに対して過保護になる姿をあまり晒したくはなかったが、他の誰かが彼女の介抱をするよりずっとマシだ。
そう思って腰を上げかけた時、聞き親しんだ美しい声が歌を紡ぎ始めた。
『“出航だ!”さあ、旅立とうか。冒険開始の号令よ。』
『幻の宝の地図を片手に、短剣を片手にいざ行こう!』
チョッパーを抱えながら、急に唄いだしたモモに視線が集まった。
普段は目立つことなどしたがらないモモだが、酒の力か、上機嫌にくるくる回る。
「なんだ、歌か? いいぞ、いいぞ! もっとやれー!!」
楽しいことが大好きなルフィが頭の上で手を叩き、はやし立てる。
それを合図に、他のクルーたちも手拍子をし始めた。