第43章 覚悟
フワフワとした意識の中、モモは2人に増えたコハクを眺めていた。
(あれぇ? おかしいな。わたしのコハクはひとりのはずなのに…。)
だけど、どう見ても2人だ。
(まあいいかぁ、2人いても。)
むしろ、愛しい我が子が2人に増えたのだ。
喜ばしいことではないのか。
そう思うと、途端に嬉しくなってくる。
「ふふふ…。」
「お、おい、モモ。なに笑ってんだ、頭でも打ったのか?」
嬉しさを堪えきれず笑みをこぼすと、コハクのひとりが心配そうに額へ手を当てた。
なんだか このコハクは動きがやけに可愛らしい。
抱きしめたい衝動にあらがいきれず、ギュムッとその身体を抱いた。
「うわ…ッ」
突然の行動に驚いたその身体が、妙にモコモコするのは、きっと気のせいだ。
「うふふふ…♪」
フワモココハクを抱きしめたまま、モモは立ち上がってくるくる回る。
「か、母さん。そんなに動くと危ないから!」
もうひとりのコハクが慌てて止める。
失礼しちゃうわ。
なにが危ないのよ。
モモは昔、海賊だったのだ。
広い海を渡り、いくつもの島を冒険した。
ローと一緒に。
ううん、もう昔のことじゃない。
今もわたしは、海賊だわ。
ここは海の上で、傍にはローも仲間たちもいる。
新しい冒険は、すでに始まっているのだ。
わたしだけじゃない。
コハクの冒険も…。
嬉しい。
楽しい。
そんな気持ちがあとからあとから溢れ出てきて、抑えられない。
この気持ちを、みんなに伝えたい。
こんな時、どうしたらいいんだろう。
どうしたら、伝えられる?
ああ、ほら。
あるじゃない。
わたしにしかできない、伝え方が。