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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第43章 覚悟




ケーキを一口食べると、口内に芳醇なラムの香りが広がり、モモをうっとりさせた。

それと同時に、頭の芯がぼぅっと痺れていくのを感じる。

(これ…、なんだったかしら。)

このフワフワした感じには覚えがあるのだが、思い出せない。
それどころか、そんなことどうでもよくなってくる。

(なんか、楽しい…。)

周囲の笑い声や騒音が、やけに心地よく感じるのだ。

何気なく手元のケーキをもう一口食べようとすると、それを制止するようにガシリと手首を掴まれた。

「ダメだよ母さん!」

「……?」

ゆっくりと見上げると、目つきの悪い少年が心配そうにこちらを見つめている。

コハクだ。
そう、わたしの息子。


「なぁにぃ? コハク、どおしたのー?」

にへらっと笑ったモモは、完全に舌が回っていなかった。
ついでに、焦点も若干合っていない。

「こりゃダメだ……。」

一足遅かった。
完全に酔っ払っている。

それでも、意識があるだけマシな方だ。

モモは壊滅的に酒に弱い。
もはや体質なのか、どれだけ歳を重ねても、変わることはなかった。

酒造も行うくせに、味見もろくにできないというのが残念なところだ。
たぶん、コハクの方が強いと思う。

「母さん、もう部屋に戻れよ。」

こうなっては最後、正気を取り戻させるのは難しい。
さっさと寝かすのが一番だ。

しかし、当の本人には酔っ払っているという自覚がないらしく、首を横に振られる。

「やぁだよー。わたし、今、楽しいんだからぁ。」

こっちの気なんて知らないで楽しそうに笑うもんだから腹が立つ。

「ほら、酔いが回りきる前に行こうぜ。」

「酔ってないよ~。」

「酔っ払っいはみんなそう言うんだよ。」

これ以上話していてもらちが明かないので、立ち上がらせようと腕を引く。


ドテッ。

しかし、足下がおぼつかないようで、見事に転んでしまう。

「おいおい、モモ、大丈夫か?」

派手に転んだもんだから、慌ててチョッパーが駆け寄ってきた。

「大丈夫、大丈夫…。」

どのへんが大丈夫なのかわからない様子で、モモは起き上がる。

そしてチョッパーを見つめ、一言。

「あれぇ? コハクが2人いるよ…。」

ほら、全然大丈夫じゃない。



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