第43章 覚悟
(なんてバカな連中なんだ…。)
コハクがこの宴に対して抱いた感情は、そんな失礼なものだった。
ルフィとウソップ、チョッパーはなんの意味があるのか鼻に割り箸を刺して踊っているし、シャチとペンギン、フランキーは肩を組み合って乾杯している。
コハクが思う“バカな連中”には、ハートの海賊団も当然含まれていて、酒が入っているとはいえ、仲間の醜態に頭が痛くなる。
「「……ハァ。」」
思わず出たため息が、誰かと重なった。
チラリと隣に視線を向けると、同じくげんなりとしたローと目が合う。
おそらく、考えていたことは同じだ。
「おい、トラ男! チビトラ! お前らもこっち来いよ!」
マヌケ面したルフィが2人を呼ぶ。
「誰が行くか。」
そんなアホな踊りに巻き込まれたくないと吐き捨てたのはコハクで、ローにいたっては無視である。
「なんだ、ガキならガキらしく遊びに参加しとけ。」
ムッとして睨み上げれば、声を掛けてきたのは給仕にきたサンジだった。
「ああいうバカなことはしたくない。」
「そうかよ。」
そういうサンジも、彼らの行動をバカだと思っているのだろう。
加わるつもりはさらさらならそうだ。
「ほら、デザートだ。食うか?」
まずローに差し出されたものは、小さな丸いケーキだった。
「いらねェ。」
甘いものがそれほど好きではないローは、一瞥しただけで断った。
「ああそう。…お前は?」
半ば答えを予想していたのか、サンジは特に気を悪くした様子もなく、今度はコハクに尋ねる。
せっかくだが、自分も甘いものは得意じゃない。
断ろうと見上げ、それから皿の上にのっているものを見て眉をひそめる。
「…なんでオレにはソレなんだよ。」
皿の上にのっていたのは真っ赤な苺がのっかったショートケーキ。
どちらにせよいらないが、まるで「お前は子供だから」と言われている気がした。
「ああ、こっちはダメだ。サバランだからな。」
「サバラン?」
「スポンジに酒をたっぷり染み込ませたケーキだよ。お前にゃまだ早い。」
なるほど…と納得しかけて目を剥いた。
酒を染み込ませたケーキ?
慌ててモモへと視線を向けると、彼女はまさにケーキを口に含んだところだった。
「ちょ…!」
母の悪癖を思い出して慌てて立ち上がった。