第43章 覚悟
「おいしい…!」
宴が始まり周囲が盛り上がる中、モモはサンジの料理に舌鼓を打っていた。
彼の料理は味も一流のことながら、盛り付けも美しく、まるで芸術のようだ。
「おいしいでしょ、サンジ君の料理。どう、一緒に一杯。」
ナミが料理に合うというワインの瓶を掲げてみせたので、モモは慌てて首を振った。
「あ、ううん。わたし、お酒は苦手で。」
「あら、もったいない。人生損してるわ。」
そう言って彼女は美味しそうにグラスを傾けた。
その仕草が妙に色っぽくて、思わず感心してしまう。
「なぁに?」
「いえ…その、ナミってすごく大人っぽいなって。」
確か、彼女は20歳だ。
大人っぽいもなにも、立派な成人ではあるのだが、自分と比べるといろんな面で負けている気がする。
「そんなことないと思うけど、子供の頃から海賊なんてやってるから、それでかしらね。」
聞けば、ナミは10歳の頃から海賊だったのだという。
話しぶりからして、好き好んで海賊になったわけではなさそうだから、きっと彼女も簡単に人には言えないなにかがあるのだろう。
人は誰しも秘密のひとつやふたつ、抱えているものだ。
(そうよね、わたしも……。)
結局あれから、ローに秘密を打ち明けられないままだ。
いずれ時期がくれば…とは思っているものの、ここだ! というタイミングを掴めずにいる。
「デザートをどうぞ、マドモアゼル?」
「……!」
つい物思いにふけってしまい、サンジが近づいてくるのに気がつかなかった。
「あ、ありがとう。」
薄い白磁の皿を受け取ると、皿の上には可愛らしいケーキがのっていた。
シロップを吸わせているのか、しっとりとしたスポンジが爽やかな香りを放っている。
(さすが、プロが作るデザートは違うわ。)
ローもコハクも甘いものはあまり食べないから、モモがスイーツを作ることはなかなかないが、いい機会なので勉強させてもらおう。
フォークを入れるのがもったいないと思いながらも、ケーキを一口食べた。
(わ、おいしい…。)
たけど、なんだろう。
なにか、おかしい。
(……あれ?)