第43章 覚悟
「なんだよ、ローのヤツ…。」
勝手に話を切り上げ、先に行ってしまったローに腹を立てながら、コハクは頭の中で先ほどの質問を繰り返した。
(もし、モモがローのせいで死んだなら、か…。)
ローはなぜ、そんな唐突な質問をしたのだろうか。
彼が例えた話は実際にはあり得ないことだけど、なにかとても大切な質問のような気がする。
ローは「なかったことにしろ」と言ったが、なんとか真面目に答えを見つけ出したくて、コハクは雨上がりの空を見上げながら、ひとり考え込んだ。
「あら、コハク。どこへ行っていたの?」
しばらくしてからサニー号に戻ると、辺りは一気に宴会モード。
モモはデッキに大きなシートを敷いていた。
「もう雨は降らないらしいから、デッキで夜ゴハンにするんですって。いいわね、広いデッキって。」
「芝生のあるデッキって素敵」なんて呑気に呟くモモは、まるでいつも通りだ。
「なぁ、母さん。」
「ん、なぁに?」
「その…、ローと…--」
なにかあったのか? と聞こうとして、言葉を飲み込んだ。
ハッキリ言って、モモは嘘や隠し事がとてもヘタだ。
そんな彼女がなんともないように振る舞っているということは、ローの悩みに気がついていない可能性が高い。
変に自分が探りをかけては、モモにいらぬ疑問を抱かせてしまう。
「ん、やっぱなんでもない。」
「??」
きょとりと首を傾げるモモは、やはりなにも悩んだりしていなさそうだ。
だとしたら、ローはいったいなにに悩んでいるのだろうか。
(まったく…。ローといい、母さんといい。)
どうして自分の周りには、こうも厄介な人間が多いのか。
「お、チビトラ~。なにしてんだ、もうすぐ宴だぞ!」
「うっせーな、チビトラって呼ぶなよ。」
悩みなんてありません!な人間代表といった感じのルフィを見ると、少しくらいローもコイツを見習えばいいのに…と思ってしまう。
そういえば、忘れてしまいそうになるが、ルフィはエースの弟なのだった。
兄弟といえども、こんなに外見も中身も違うなんて不思議だ。
エースがいつもルフィを心配していた気持ちもよくわかる。
例えば、いつか自分に弟妹ができたなら、同じような感覚を味わうのだろうか。