第43章 覚悟
「…うーん。」
我ながら意味不明な質問だと思っているのに、コハクは真剣に考え込んでいた。
「大切なヤツかぁ…。なら、やっぱり母さんかな。」
コハクにとって、船の仲間はみんな“大切なヤツ”に含まれているのだが、それは恥ずかしくてとても言えない。
「なら、身近なヤツは俺だ。もし、モモが俺が原因で死んだらどうする。」
えげつない質問だ。
けれど、コハクの父親はエースなのだから、事実とそう変わらない例えだと思う。
「ローが原因って…、それ、考えにくいじゃん。」
ローはモモを必ず守るだろうし、あまりに現実味のない例えは、コハクにとって想像しにくいものだ。
「……例えば、だ。」
「例えば…ねぇ。」
理由はよくわからないけど、ローは今、本気で悩んでいる。
それならば、自分はこのわけのわからない質問にもきちんと答えるべきだ。
黙って悩み込むコハクを見下ろし、ローは内心自嘲気味に笑った。
なぜなら、コハクの答えは聞かなくてもわかっているから。
もし、モモがローのせいで死んだとしたら?
そんなの、許せないに決まっている。
わかりきった答えを聞いて、いったいなにになるというのか。
許されたいのか、それとも責められたいのか。
それすらも、よくわからない。
(バカな質問をした…。)
「あッ、トラ男~! チビトラ~! こんなとこにいたのか!」
ローがコハクへの質問を後悔し始めた時、2人の心境をまるで無視した能天気な声が響いた。
「おい、誰がチビトラだ!」
たった一度の跳躍でこちらにやってきたその男を、コハクは不機嫌そうに睨む。
「ニシシ。お前、ちっこいトラ男みたいだから、チビトラな。」
「ふざけんな!」
先ほどまでの雰囲気はどこへやら。
ルフィとコハク、2人の言い合いはまるで同い年の少年のようだ。
「雨が止んだから、宴が始まるぞ。ほら、早く来いよ!」
「ああ、あとで行く…」
「イヤ、すぐ行く。」
話の途中だったのを気にするコハクを遮って、勝手に応えた。
「おい、ロー…!」
「さっきの質問はなかったことにしろ。…行くぞ。」
そう言って、ローは先にサニー号へ戻ってしまった。