第43章 覚悟
ナミの予報通り、それからすぐに晴天だった空は曇り始め、あっという間に激しいスコールに見舞われた。
みんな雨に濡れるのも構わず各自の役割を果たし、モモも張り切って手伝おうとした。
けれど、濡れたデッキで滑って転ぶわ、ロープに足を引っ掛けるわで逆にみんなから心配されてしまい、おとなしく後方支援に回った。
自分の鈍臭さに呆れ果てるばかりだが、それでもやれることはたくさんあったので、時間の経過が驚くほど早かった。
今朝、ローに感じた違和感など、忘れてしまうくらいに。
「……ふぅ。」
大雨がようやく収まってきた頃、ローは自船のデッキでひと息ついた。
船長、クルーと上下関係があっても、ひとたびハプニングに見舞われれば、そんなものなど関係なく協力し合って乗り越える。
船に乗っていれば必然的に身につくものではあるが、普段命令されることを嫌うローにとっては、上からぎゃんぎゃん指示されることはストレスの塊だ。
麦わらの一味は特に容赦がなかった。
海賊の女というのは、ナミのような強気な女が多いが、そういう女はローの好みではない。
昔はどうだったのか…なんて思い出せもしないが、今はモモ以外、ローの心を動かせる女はいない。
決して海賊らしくない彼女は、その昔 海賊だった。
控えめなモモが海賊でいられたのは、やはりエースが理由なのだろうか。
「ロー。」
ぼんやりと考え事をしていると、ふいに声を掛けられた。
顔を上げて視線を向けると、他のクルーよりも軽めな足音が近づいてくる。
「なにしてんだよ、こんなところで。」
そう言って見上げてくる己の弟子の眼差しは、曇りひとつない。
今のローには、その眼差しが痛かった。
「別に…。お前こそ、なにをしてる。」
眼差しの持ち主…コハクの父親がわかってからは、なんとなくコハクとも話しづらい。
「なにって…別に。ローがこっちに来るのが見えたから。」
「なにか用か。」
追ってきたのだと言うコハクに、眉を上げて尋ねれば、彼はなんとも言いにくそうに頭を掻いた。
「用っていうか…。ただ、ローの様子が気になっただけだよ。」
「俺の様子?」
「なんかほら…、元気ないじゃん。」
呆れた。
どうやら自分は、こんなガキにまで見破られるくらいどうかしているらしい。