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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第43章 覚悟




「……ふぅ。」

どのくらい時間が経過しただろうか。
モモは土いじりの手を止め、顔を上げた。

そろそろ他のクルーたちも起き出す頃だろう。

船の中だというのに、適切な温度と湿度を保った温室は、先日植えたばかりの薬草もすくすくと元気よく育ててくれる。

まさに、モモが理想とする船だ。

『お前、何色が好きだ?』

いつか、かの造船島でローにそんな質問をされた時は、自分がこんな最適な環境で薬草を育てられるなんて考えていなかった。

あれから、もう6年以上の月日が経つ。

ローと別れていた間、自分の薬剤師としての力は持て余してばかりだったが、これからは彼と仲間のために使っていきたい。

それは、ため息が出るくらい、幸せなことだった。


ずっと中腰だったため、軽い腰痛を感じて背筋を伸ばすと、こちらに向けられる視線に気がついた。

「あら、ロー。」

視線を追って入口方向に目を向けると、いつからいたのだろう、ローが壁にもたれかかりながら腕を組んでこちらを見ていた。

「おはよう、早いのね。」

寝ていたかどうかは不明だが、引きこもり気質な彼は、たいがい誰かが呼びにいかなければ部屋から出てこない。

「……ああ。」

「……?」

なんだろう、どことなく元気がない気がする。

「どうかした? なにかあったの?」

「あ? なにがだ。」

それとなく尋ねてみても、ローは眉をひそめるばかり。
もしかしたら自覚がないのかもしれない。

(疲れているのかしら。)

考えてみれば、ルフィたちと合流するまで見張り番をしていて一睡もしていないし、昨日は昨日でとてもバタバタしていた。

心なしか目の下の隈も濃い。

モモは立ち上がり、前掛けの土ぼこりを軽く払うと、ローに近づいた。

「大丈夫? ちょっと疲れているんじゃない…?」

そう言って、何気なくローの額に手を伸ばす。

しかし…。


バシッ。


「……!」

その手は、ローに触れる前に振り払われてしまった。

痛くはなかったが、驚いてローを見つめると、そこにはモモ以上に驚きの表情をしたローがいた。



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