第42章 追憶のひと
(バカね、エース。わたしとルフィの、どこが似ているというの。)
彼はこんなにも強くて、モモはこんなにも弱い。
似てるところなんて、ひとつも見つけられなかった。
過去はなにも変えられない。
そうわかっていても、モモの心の靄は未だ晴れぬままだ。
「ダメね、わたしは。せっかくあなたに会えてエースのことを聞けたというのに…。こんなんじゃエースに怒られちゃうわ。」
ウジウジしている人間なんて、エースが最も嫌いとするタイプだろう。
ルフィに会えて、ずっと聞きたかったことを聞けたのに、沈む気持ちを抑えられない。
「ルフィ、あなたは強いのね。わたしなんかより、ずっとエースとの絆が深いのに、今も前を向いていられる。」
もしモモがルフィの立場なら、きっと堪えられないと思う。
しかし、ルフィは首を横に振った。
「いいや、おれは強くなんかねぇよ。」
本当に強ければ、あの日、エースを助けられたはず。
『ごめんなァ、ルフィ。ちゃんと助けて貰えなくてよ…!』
あんな言葉、言わせずにすんだ。
「おれがエースの死から立ち直れたのは、みんなの…仲間のおかげだ。」
離れていても、支えてくれる仲間がいたから、またこの海に戻ってこられた。
決してルフィ自身の力じゃない。
それに、なにより、エースのあの言葉があったから。
『ルフィ、俺がこれから言う言葉を…、後からみんなに伝えてくれ。』
ふと、モモにもあの言葉を伝えるべきなんじゃないかと思った。
なぜなら、エースのあの言葉には、きっとモモも含まれていたと思うから。
「エースの最期の言葉を聞いたのは おれだ。…お前、それを聞いてくれるか?」
「エースの…、最期の言葉?」
エースが死に際に言葉を残したことを初めて知った。
それはいったいどんなものだろう。
もし、自分なんかが聞いていいものなら、ぜひ聞いてみたい。
「……教えて。」
彼はいったい、最期になにを言い残したのか。