第42章 追憶のひと
それまで黙ってモモの言葉を聞いていたルフィだが、ふいに口を開いた。
「…おれは、お前の力がどんなもんなのか知らねぇ。」
モモはルフィの目の前で、植物を急成長させてみせた。
それは不思議で、異端な力だとわかる。
わかるけど、彼女が内に秘めた力は、ルフィにはわからない。
でも、ルフィにもわかることがある。
「お前、勘違いをしてるよ。」
「え……?」
モモにとって、ルフィの言葉は意外だったらしく、ゆっくりと首を傾げた。
「エースが死んだのは、お前のせいなんかじゃない。」
「……!!」
どうしてわかったのだろう、モモが密かに、エースの死に責任を感じていたことに。
驚いて声を失うモモに、ルフィはさらに続けた。
「エースが死んだのは、おれが弱かったせいだ。」
覇気も使いこなせず、そのくせ自分は強いと過信していた。
その結果、たくさんの人の力を借りておきながら、ルフィはエースを助け出せなかったのだ。
「そんなの……!」
違うと言いたかった。
ルフィは兄の危機に駆けつけ、全力で戦ったのだ。
呑気に過ごしていた自分とは大違い。
「お前は、エースが死んだのは、おれのせいじゃないと思うか?」
「当たり前じゃない!」
今では、あの決戦自体をルフィが引き起こしたとまで言われている。
それなのに、どうして彼のせいだと言えようか。
モモがあの日、あの時に、エースの手を取っていれば、すべては違っていたかもしれないのに。
「じゃあ、おれとお前は同じだな。」
「え……?」
“同じ”の意味がわからなくて、尋ね返してしまう。
「エースが死んだのを、自分のせいだと思ってる。」
「それは…。」
何度も思った。
あの日に巻き戻れたら…と。
ルフィも、同じなのだろうか。
「でもたぶん、エースはお前のせいでも、おれせいでもないって言うよ。」
「……。」
当たり前だ。
エースは、そんなことを誰かのせいにする人じゃない。
「お前はさ、もしエースがここにいたら、なんて言うと思う?」
もし、エースがここにいたら…。
モモは目を瞑り、思い描いてみた。