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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第42章 追憶のひと




ずっと思っていた。
もし、あの時、エースの手を取っていたならば、彼は今でも生きていただろうか。

もし、マリンフォードにモモがいたならば、この力を彼のために使えただろうか。

ずっとずっと…。

後悔していた。

そう、ルフィの瞳に宿った色は、後悔の色。


「わ、わたし…ッ」

堪らなくなって、胸から溢れ出る想いが口をつく。

「わたし…、エースに…仲間にならないかって誘われていたの。」

何度も何度も、差し伸べられた温かい手。
モモは今でも、忘れることができない。

「わたし、それを断ったわ。」

セイレーンだから。
海に出る資格なんてないから。

いろいろな理由をつけて。

そのたびにエースは自分を説得してくれたけど、モモは首を縦に振らなかった。

その理由は。
その本当の理由は……。


『お前、待って…いるのか?』


エースに言われた言葉。
あの時はなんのことかわからなかったけど。

そう、きっとモモは待っていたのだ。

いつでも心に住み着いて離れないあの人を。
愛しい愛しいあの人を。

(……ロー。)

決して現れるはずのない彼は、6年の時を経て再びモモの前に現れた。

するとどうだろう。
今、自分はどこにいる?

波打つ海の上だ。
冒険のど真ん中だ。

もう海へは出ないのではなかったのか。

エースの手は何度も振り払っておきながら、ローの手を取った。

結局、モモはただ、ローを待っていただけなのかもしれない。

そう思うと、ズシリとした罪悪感が責め立ててくる。


「もし、わたしが…エースの手を取っていたなら、エースは今もここにいたんじゃないかって思うの。」

懺悔のような告白を、ルフィは黙って聞いていた。

「あなたも見たでしょう、わたしの力を。」

ルフィが見たのはほんの一部分だけど、今のモモには、いろんな歌が唄える。

眠りの歌は、多くの海兵を眠らすことができるだろう。
海に呼びかけ唄えば、大波を起こすこともできたかもしれない。

禁忌とされた滅びの歌も、今ならきっと…。

わたしはなんのために、セイレーンとして生まれたのだろう。



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