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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第42章 追憶のひと




しばらくの間、2人に沈黙が落ちた。

ルフィは今、どう思っているだろうか。

こんなこと、聞くべきではないとわかっている。
モモの質問は、ルフィの傷を抉るものだろう。

それでも知りたい。
これは、モモのワガママだ。

やがて、ルフィは重い口を開いた。

「おれはあの日のことを、全部知ってるわけじゃねぇ。」

エースの死を目の当たりにしたルフィは、その衝撃で意識を失ってしまった。

ルフィの知るあの決戦の終焉は、後になってジンベエから伝え聞いたものだ。

「…それでもいいか?」

他人から聞いた話も含めて話す。
そのことをわざわざ確認してくれる。

きっと触れられたくはないはずなのに、そんなふうに聞く彼は、エースと同じくらい優しい。

「…お願いします。」

それでも、モモは知りたいのだ。

「わかった。」

ゆっくりと頷いたルフィは、誰もが寝静まる船の上で、2年前の出来事を語り始めた。


ことの発端である“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチのこと。

大監獄インペルダウンに侵入するも、入れ違いになってしまったこと。

インペルダウンでエースを助けたいという志を持つ者たちと共に、マリンフォードへ乗り込んだこと。

“白ひげ”エドワード・ニューゲートの登場。
そして、一度はエースの枷を外すことに成功したこと。

誰もが予想だにしなかった、白ひげの死。

“赤犬”現海軍総帥であるサカズキの猛襲。

そして…。


「エースは、おれの目の前で死んだ。」

マグマと化した赤犬の拳は、ルフィを貫くはずだった。

精魂使い果たし、無様にも力尽きたルフィを。

しかし、ルフィの目の前に広がった光景は、信じがたいものだった。

顔を上げると、両腕を広げて自分を守る、兄の姿。
その胸には、毒々しいまでに赤く煮えたぎる腕が貫いていた。


「エースは、おれを庇って死んだんだ。」


そう呟いたルフィの目に、モモは自分がよく知る色が宿るのを見た。



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