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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第42章 追憶のひと




聞きたいことがあった。
ずっとずっと、聞きたいこと。

それは誰かの手によって、ねじ曲げられた真実ではなくて、本当の事実を。

あなたに会ったら、聞いてみたかった。


ずっと会いたいと思っていた麦わらの船長は、いつの間にか船首から降り、モモの目の前に立っていた。

静かにモモの言葉を待っている。

「…わたし、エースと友達だったの。」

「友達? エースと?」

友達。
そう、友達。

だけどエースは、友達と呼ぶには少しだけ違和感がある。

いつもモモの心にズカズカと遠慮なく入ってきては、嵐のように去っていく。

そんな彼を支えのように感じていたし、なんでも話せた。

でも、家族ではないし、恋人でもない。

そんな彼の存在がどのようなものだったのか、今となってはもうわからないけど。

「エースには、たくさん助けてもらったし、いろんなものをもらったわ。」

島を出よう。
仲間になろう。

そう何度も手を差し伸べてくれたのは、後にも先にもエースただひとりだった。

「だけどわたしは、エースになにも返せなかった。」

優しさを突っぱね、頑固に意志を貫き通し、最後の最後まで なにも返してあげられなかった。

「…おれに聞きたいことってなんだ?」

ルフィがエースの弟であることは、すでに公になっている。
今さらそれが知りたかったわけではないことを、ルフィも気がついていたのだろう。

聞きたい。
でも、聞くのは少し怖い。

この期に及んで、まだ尻すぼみする自分が情けなかった。

けれど、ここで聞けなかったら、たぶん一生聞くことはできないと思う。


「エースは、政府の手によって処刑されたと聞いたわ。」

「……ああ。」

その場にルフィがいたことは知っている。
エースを助けようと、たくさんの仲間が駆けつけたのだ。

「でもわたしは、その日、エースのビブルカードが燃え尽きるのにも気がつかなかった。」

明日は来るのだと、エースは無事だと信じきっていたから。

最期の瞬間を、モモは知らない。

だから…。


「教えて欲しいの。エースがどんなふうにして、最期の時を迎えたのか…。」

ねじ曲げられた報道ではなく、彼の自慢の弟である あなたから。

教えて欲しい。



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