第42章 追憶のひと
「あの、ロー…。」
モモの呼びかけに、ローは応えるように視線を合わす。
正直、こんな流れみたいな感じで告白はしたくない。
でも、話せる秘密がこれしかない以上、少しでもなにかを明かしたかった。
(…どんな反応をするかな。)
一瞬、怯えにも似た感情がモモの胸を占めるけど、すぐにそれを拭い去る。
どんなに時が流れても、ローはモモが怖がるような反応などしたりしない。
そう、信じているから。
だから……。
「あのね、ロー、わたし…--」
「メシだーー!!」
「!!」
モモが心を決めたその瞬間、まったく場違いな雄叫びが響いた。
驚いて振り向くと、屋根の上からルフィが降ってきた。
「おい、お前!」
ダンッと着地したルフィがこちらを指差す。
「お前……、名前なんだっけ?」
「あ、モモよ。」
そういえば、すっかり名乗るのを忘れていた。
「そうそう、モモ! お前が戻ってこねぇから、サンジがメシを出さねぇんだよ。早く来い!」
「あ……。」
うっかりしていた。
モモはもともと夕食のために、みんなを呼びにきていたのだった。
サンジの性格上、女性を待たずして食事を始めないだろうし、こんなに時間を食っては逆にみんなを待たせていたことだろう。
「ご、ごめんなさい。」
結果、待ちきれなくなったルフィが空腹を堪えられずに呼びにきたという状況を察し、モモは慌てて頭を下げる。
「いいから行こうぜ! あ、トラ男。お前、こんなところにいたのか。メシだから、お前も早く来いよ。」
そう言いながらも早く食事がしたいのか、ルフィはビュンと伸ばした腕をローに巻き付かせ、無理やり立ち上がらせる。
「…やめろ。」
その腕を心底不愉快そうに払いのけながら、ローは自ら歩き始める。
もはや、告白云々の雰囲気ではない。
(でも、これで良かったのかも。)
大事なことだし、やっぱりこんな勢いみたいな形で話してはいけないのだと気を取り直した。