第42章 追憶のひと
キッチンを出たモモは、出会うクルーたち1人ひとりに声をかけていった。
みんなの前で失神するという醜態をさらしたせいで、そりぁもう心配されることったらない。
あらかた船をまわったところで、ピタリと足を止める。
(しまった、この船のクルーが何人いるのか聞いておけばよかったわ。)
これじゃ、全員に声をかけられたのかもわからない。
(でも…、この船の人たちなら、夕食時くらいわかるかしら。)
そこまで考えて、ようやくこれがサンジの気遣いなのだと思い至った。
なにか手伝いができればと思ったが、逆に気遣われてしまうとは情けない。
とはいえ、ハートの海賊団のクルーは夕食時間など知らないだろうし、呼びにきたことは正解だろう。
(えっと、まだ声をかけられてないのは…。)
シャチはウソップと釣りをしていたし、ペンギンはまだモモが挨拶をしていなかった緑髪の剣士と夕食前なのに酒を酌み交わしていたところを発見した。
ベポはというと、人様の船だというのに堂々とデッキで昼寝を貪っており、ジャンバールはあまり居心地がよくないのか、律儀に見張り番をしていた。
とすると、あと残るのは…。
(ローだけね。)
先ほどルフィと出くわしたことを考えると、話し合いはとうに終わっているはずだ。
だとすれば、この船のどこかでヒマを潰しているか、すでにキッチンにいるか。
恐らくは前者だとモモは思った。
なぜなら、ローの性格からして、自ら賑やかな場所にいくとは考えにくいから。
そういう一匹狼のようなところが、彼の良いところであり、悪いところだと思う。
なんとなく、船内にはいないような気がして、デッキへと上がることにした。
外へ出てぐるりと船をまわっていると、案の定、後方デッキで壁を背に座り込むローの姿があった。
目を瞑っていたが、寝ていたわけではないだろう。
モモの気配を察知した彼は、すぐに顔を上げる。
長い夢を見ていたせいだろうか、ローと目を合わすのが、ずいぶん久しぶりに感じられた。