第42章 追憶のひと
結局、モモがルフィに追いついたのは、キッチンでサンジに野菜を渡している時だった。
「うお、すっげぇな。こんなデカくて美味そうな野菜見たことねぇよ。」
大きすぎるが瑞々しい野菜を目にして、サンジは驚きを露わにする。
サンジの反応にニカリと笑ったルフィが、なぜか自信満々に胸を張る。
「ニシシ、すげぇだろ? これ、コイツが…--」
「ちょ、ちょっと!?」
約束した先からうっかりバラそうとするルフィに、モモは大いに慌てた。
「あ、悪ぃ悪ぃ。言っちゃいけねぇんだった。」
「いや、あのね…。」
その発言だけでもそうとうアウトだ。
くれぐれもローの前で言わないでほしい。
船長の妙な反応には慣れているのか、サンジは特に気にした様子もなく、早速調理へ取りかかる。
「メーシ! メーシ!」
「うるせぇな、すぐできるから待ってろ!」
まだ料理も出ていないのに、ちゃっかりテーブルへついてフォークとナイフを持ったルフィに一喝が飛ぶ。
「なにかお手伝いすることはある?」
「いいんだよモモちゃん。ゆっくり座ってなって。」
「いや、でも…。」
他のクルーたちだってまだきていないのに、待ちわびるかのように席につくなどできるはずもない。
しかし、モモの常識はモモの中にしかないようで、コハクはというと早々に椅子に座った。
もう、なんだか恥ずかしい。
「あー…そうだ、じゃあ、メシができるって他の連中にも知らせてくれないか?」
あまりにもモモが手持ちぶさたにするものだから、優しいコックが仕事をくれた。
「わかったわ、呼んでくる。」
普段なら、「野郎ども、メシだー!」とサンジが叫べばみんなが集まることなど知らず、モモは意気揚々と与えられた仕事を全うしようとキッチンを出て行った。